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BJCC第14回Meetup開催レポート:「AIって何?」
に答えられますか?——改めて歴史から学ぶ「AIの基礎」

 2021.11.17  BJCC

便利で効率的なデジタルワークスペースのありかたを考え、学び、実践していく組織のためのコミュニティ「Box Japan Cloud Connections(BJCC)」では、さまざまなテーマについて学ぶ勉強会「BJCC Meetup!」を開催しています。

2021年6月4日に開催された「第14回 BJCC Meetup!」のテーマは「今更聞けないAIの基礎」。最前線でAIの研究開発、ビジネス化に取り組んでいるrinna株式会社の得上竜一氏をゲストに迎え、AIの歴史や最新の動向について、基礎から解説していただきました。

そもそも「AI」って何だろう?

近年、毎日の生活でも「AI」あるいは「人工知能」という言葉を聞く機会が多くなりました。さまざまな文脈で耳にしますが、みなさんはAIとは何か、その定義について答えることができるでしょうか。

スピーカーの得上竜一氏は、現在、rinna株式会社でビジネス開発を担当しています。「rinna」という社名を見て、ピンときた方もいるかもしれませんが、この会社は、以前、マイクロソフトが手がけていた元女子高生AI「りんな」を含むチャットボットAI事業を継承し、2020年6月に設立された会社です。

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現在は「第3次AIブーム」のまっただ中

得上氏によると、現在の状況を踏まえて「AIの定義」を明確に答えるのは難しいと言います。

「さまざまな研究者や有識者が“AIの定義”をしようと試みていますが、いまだ、決定版と言えるようなものは、出てきていないというのが本当のところです」(得上氏)

BJCC第14回Meetup開催レポート:「AIって何?」に答えられますか?——改めて歴史から学ぶ「AIの基礎」02

人工知能を表す「AI」は、「Artificial Intelligence」の略語です。実は、この「Artificial Intelligence」という言葉の初出については、出典が分かっています。1956年に、ダートマス大学に在籍していた計算機科学者、ジョン・マッカーシー(John McCarthy)が主催し、人工知能という研究分野を確立した会議として知られている「ダートマス会議」です。

この会議の提案書には、人間が行う「学習」や「知能」にまつわるさまざまな機能について正確に説明することで「機械がそれらをシミュレートできるようにするための基本的研究を進める」と書かれていました。その研究の中で「人間のように考える機械のことを“人工知能(Artificial Intelligence)”と呼ぼう」と定義しているのです。これが世界的な「第1次AIブーム」の幕開けになります。

初期における「AI」の定義は「人間の“思考”を真似する機械」というものです。しかし、こうした「人間を模倣する機械」に対する追求は、「AI」という言葉の登場以前からあったといいます。得上氏は、あるYouTube上の動画を示しました。

【参考リンク】
JAQUET DROZ CORPORATE MOVIE - YouTube

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これは、現在も時計ブランドに名を残すスイス生まれの職人、ピエール・ジャケ・ドロー(Pierre Jaquet-Droz)が1700年代に制作した、「オートマタ」と呼ばれる「からくり人形」を紹介した映像です。数千個の歯車を組み合わせて、文字を書いたり、ピアノを弾いたり、絵を描いたりする精密な「ロボット」は、あらかじめ作られたプログラムに従って結果を出力するという意味で、その後の計算機(コンピュータ)の原型とも呼べるものです。得上氏は「“人間のマネをする機械”という観点で、オートマタもまた、AIの源流にある歴史のひとつとして押さえておきたい」としました。

では「人間のように思考する機械を作る」というスローガンのもとで盛り上がった「第1次AIブーム」は、その後どうなったのでしょうか。1960年代に過熱したブームは、1970年代に急速に「冬の時代」へと突入していきます。その理由として挙げられるのは、当時のAIが「現実世界の問題を解決できるレベルに達しなかった」ことです。

「簡単なゲームのような“ルールがある問題”について、その最適解を探す——という範囲においてはある程度の成果があったものの、物理法則や、その他の複雑な問題が関わってくる現実世界の問題を解決できるような“知能”を作り出すことはできませんでした。そうするうちに、徐々にAIに対する社会的な関心は薄れていってしまいました」(得上氏)

この“冬の時代”を経て、1980年代に入ってからは、コンピュータに特定領域の専門知識を持たせて、現実世界の問題解決に役立てようとする動きが活発になります。この仕組みは「エキスパートシステム」などとも呼ばれており、それが「第2次AIブーム」のきっかけになりました。

しかし、このブームも、1990年代以降、徐々に下火になっていきます。その大きな原因は、エキスパートシステムのアプローチでは、機械に専門領域の知識を与える作業、つまり「学習」を、人間が行わなければならないためでした。

「複雑な現実の状況に対応できるあらゆる知識を、人間がひとつひとつ教えていく作業には膨大な労力がかかります。また、“あらかじめ想定されていないような状況にどう対応するか”という知識は、人間にも教えることはできません。結果として、“作る労力が得られる成果に見合わない”と判断され、エキスパートシステムを中心とした第2次AIブームも終わりを迎えます」(得上氏)

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2度目の“冬”を経て、現在は「第3次AIブーム」のただ中にあります。このブームの背景には「機械学習」や「ディープラーニング」といった手法の発展がありますが、これには、2000年代以降の「クラウド」や「GPGPU」(General Purpose Graphics Processing Unit、画像処理ユニットによる汎用処理)といった技術の進化が深く関係しています。

「機械学習やディープラーニングといった手法自体は、以前からあるものでした。しかし、コンピュータの処理能力が大幅に向上したことに加え、クラウドを通じて、これらの手法に必要な計算を行うためのコンピューティングリソースが、以前よりも容易に調達できるようになったことが、その進化を一気に加速させました」(得上氏)

GPUは、以前はコンピュータの画面を表示するための画像処理用途に特化したプロセッサでしたが、2000年代以降には、GPUの「単純な計算を大量に並列処理できる」という特性を、他の用途で利用する「GPGPU」も盛んになりました。

これによって、「人間が労力をかけて、機械に知識を覚えさせなければならない」という課題を、「機械が膨大な計算を行って、自分で学習できるようにする」という形で解決したのです。この学習方法の変化は、目覚ましい成果を生みました。

「機械学習」や「ディープラーニング」では何をやっているのか

まず「機械学習」ですが、これはいわゆる「回帰分析」に基づく予測に近い考え方です。得上氏は「気温」と「アイスクリームの売上」の関係を例に挙げて説明しました。「暑い日には、アイスがたくさん売れそう」というのは、普通の人間でもできそうな「予測」です。

では「どのくらいの暑さの時に、アイスが何本くらい売れるか」の予測を機械に行わせるためにはどうすればいいでしょう。そのためには、過去の「気温」と「その日のアイスの売上」のデータの組み合わせを大量に集め、コンピュータに投入します。

コンピュータは、気温と売上のデータから、その2つのデータの関連性を表すような数式を計算によって導き出します。こうすることで「気温がこのくらいの時には、アイスがこのくらい売れる」という予測を機械で行うことが可能になります。この予測の精度は、データ数が増えれば増えるほど上がっていきます。

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これが単純な「機械学習」の仕組みですが、これには、まだ問題があります。数式を導き出すために、どのデータに注目すべきか(この例では「気温」と「アイスの売上」)については、人間が考えて、機械に教える必要があるのです。

「ディープラーニング」は、さらに一歩進んだやり方になります。ポイントは、多種かつ大量にあるデータから、それぞれの「関連性」を、膨大な計算をもとに機械自らが算出して、どのデータに注目すれば、目的の出力を得られるかを学習するところにあります。

ディープラーニングの例としてよく挙げられるものに「手書きの数字を判別する」という画像認識のモデルがあります。コンピュータは、手書きの数字を、画像処理の最小単位である「ピクセル」に分解し、それぞれのピクセルに「何か書かれているか」、あるいは「空白か」を見ます。結果は数値として、次の「層」にあるノードに出力されます。

層が異なるノードの間では「重み付け」が行われます。各ノードの数値は、この「重み付け」に応じて変換されながら、次の層のノードに渡されていきます。こうした処理が複数回繰り返されることで「どの部分のピクセルに注目すれば、書かれた数字を判別できるか」について、機械自らが学習していくのです。

ちなみに、このノード間の重み付けのパターンが、AIの「モデル」と呼ばれるものになります。

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ディープラーニングを特徴付けている「ノード間の重み付け」は、人間の脳の中で起こっている「シナプス間の情報伝達」の仕組みに近いものです。これは以前から「ニューラルコンピューティング」として試みられてきたコンセプトでもあります。

この処理のために必要な計算の量は膨大ですが、それが「単純な計算を大量にこなせる」という特性を持つGPUと、非常に相性が良かったのです。計算にまつわる技術の進化と、「クラウド」によって、そのためのリソース調達が容易になったことが、ディープラーニングという手法を急速に進化させたのです。

企業が「AIを活用する」場合の5つのパターン

得上氏は「AIを使う」ときのパターンとして、その目的や難易度から、以下の5つのレベルが考えられるとしました。

  1. アプリ・UIを通して使う
  2. 誰かが作ったモデルをAPIなどから使う
  3. 誰かが作ったモデルを(ベースに自前のデータで学習させて)使う
  4. 誰かが書いた論文をベースに自前のデータで一から学習させて使う
  5. 新手法を確立する

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1は、既にアプリケーションやSaaSとして提供されているようなものをユーザーとして利用する場合です。最も手軽で、目的と合うアプリケーションが見つけられれば、成果も出しやすいでしょう。

SaaSとの組み合わせで多いのが、2です。ワークフローやビジネスプロセスなどの処理の一部に、APIベースで外部のAIモデルを組み合わせる——といった形で使われます。例えば、受注処理のワークフローに、手書きの発注書を読み取ってデータ化する文字認識AIを組み込んだり、チャットツールと翻訳AIを組み合わせて、チャットルームに自動翻訳の機能を追加したりする——といった使い方が、このパターンです。

3は、既にインターネット上などで公開されているプリトレインドモデル(事前にある程度の学習が行われているモデル)に対して、データを追加で学習させてチューニングを施し、より自社のニーズにあったAIモデルを作成する使い方です。

4の場合は、さらに進んで、論文などをベースに自社のデータで一からAIモデルを作成します。5は、AI処理に関する新たな手法を自社で開発していくような取り組みを指します。

企業で「AIを業務に生かす」という場合には、1か2の方法が一般的です。もし、社内にAIに明るいデータサイエンティストがいたり、パートナーの支援が得られたりするならば、3まではフォーカスに入ります。4あるいは5については、AIそのものをコアとしてビジネスを展開するような企業での取り組みと言えます。

「一口に“AIを使う”といっても、技術的な難易度や専門組織の必要性といった点で、1から2と、3以降の取り組みの間には非常に高い壁があります。これから、業務の中でAIを使っていくことを考えるのであれば、まずは既存のアプリケーションやWebサービス、API連携などを念頭に検討をしてみることをおすすめします」(得上氏)

既に実用化が進んでいるAIの活用領域は?

それでは、今現在、どのような用途で使える「AI」の研究が進んでいるのでしょうか。得上氏はおすすめの情報リソースとして「Browse State-of-the-Art」というWebサイトを紹介しました。

【参考リンク】
Browse the State-of-the-Art in Machine Learning | Papers With Code

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このサイトでは、さまざまな領域における先端技術の論文がショーケース形式で一覧できます。得上氏は、このサイトを参照しつつ、AIのさまざまな用途と、その具体例について紹介しました。

  • 画像認識…画像から、そこに写っているものが何かを識別する。
  • 画像生成…元画像や絵の断片から、新たな画像を生成する。LINEの「りんな」に「肖像画」と話しかけると、自分の写真を絵画風に変換してくれる仕組みは、この技術を利用している。
  • 音声認識…音声データをテキストデータに変換する。
  • 音声合成…テキストデータから音声データを生成する。スマートスピーカーやナレーションソフトなどで利用されている。
  • 自然言語処理(翻訳)…ある言語で書かれた文章を、他の言語に翻訳する。
  • 自然言語処理(文章生成)…断片的なテキストから文章を作成する。LINEの「りんな」とチャットで会話する仕組みに利用されている。

得上氏は、最後の「自然言語処理(文章生成)」の例として、「OpenAI GPT-2」をrinnaで日本語向けにチューニングしたモデルのデモを行いました。OpenAIは、テスラやスペースXの創設者として知られるイーロン・マスク氏らが創設した、人工知能研究を行うための非営利団体です。GPT-2(Generative Pre-trained Transformer 2)は、このOpenAIが開発した、自然な文章を自動生成するAIモデルです。

rinnaがチューニングしたGPT-2のモデルでは、日本語で断片的な文章を入力すると、その続きを、ある程度体裁の整った日本語の長文として生成します。モデルのチューニングにあたっては、青空文庫で公開されている夏目漱石の小説を5000行ほど学習させたそうです。文章生成の学習に小説を利用すると、「会話」的な文章を生成しやすくなり、キャラクター性を持たせやすいといいます。

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「AIキャラ」同士が勝手に会話する世界がやってくる

現在、得上氏が所属するrinnaでは、「りんな」のような「AIキャラクター」を、企業や個人へ広く普及していくことに注力しているそうです。

「rinnaが目指しているのは、すべての人、すべての企業が、自分のAIキャラクターを持ち、互いにそのキャラクターを通じてネット上で情報交換をすることが当たり前となるような世界です。

現在の“りんな”を見ていただいても分かるように、既にAIキャラクターは、テキストや音声で雑談のような会話を交わせるレベルのものになりつつあります。ビジネスにおいて、AIキャラクターは、企業が顧客とより密接につながるためのチャンネルとしての役割も担っていけると思っています」(得上氏)

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その取り組みの一環として、rinnaでは、ユーザーが自分の好みに合ったAIキャラクターを育成できるアプリ「キャラる」の先行公開をスタートしています。

【参考リンク】
rinna Co., Ltd – キャラる

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「キャラる」では、ユーザーがGUIでキャラクターの性格を選択したり、チャットのような形で会話の「お手本」を示してあげたりすることで、難しいプログラミングを行わずに「りんな」のような雑談ができるAIキャラクターを作成できます。自分が作ったキャラクターと、他のユーザーのキャラクター、あるいは「りんな」が、アプリの上で勝手に会話を行うような仕組みも用意されています。

「このようなAIは、チャットボットの形で、企業のWebサイトやアプリなどに組み込むことができます。興味のある企業の方は、ぜひご連絡をいただければと思います」(得上氏)

得上氏は、今回の勉強会をきっかけに、AIについてさらに深く知りたいと考えている人におすすめの入門書として「働きたくないイタチと言葉がわかるロボット」という書籍を紹介しました。

【参考リンク-Amazon】
働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」


これは、怠け者の「イタチ」が、自分の代わりに何でもしてくれる「ロボット」を作ろうとする過程で、普段われわれも何気なく使っている「言葉」や、その「意味」について考えを巡らせていくという小説です。物語仕立てで、おもしろおかしく読み進めながら、「知能」「AI」についての理解が深められるので「おすすめ」とのことです。

今回の「BJCC Meetup!」では、今話題の「AI」について、rinnaの得上氏に解説をしていただきました。AIの歴史にはじまり、「機械学習」「ディープラーニング」といった手法の概要、さらに、それを組織の中でどう活用できるかのヒントを通じて、以前よりも「AI」というものについて、具体的にイメージができるようになったのではないでしょうか。

今後も、BJCCではさまざまなテーマでイベントを開催していく予定です。いち早く情報を知りたい方は、ぜひコミュニティに参加し、BJCCのSlackチャンネルをのぞいてみてください。

【執筆:柴田克己】


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