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「ノーコード開発の「失敗しない導入」のために知っておくべきこととは——日本ノーコード推進協会理事の中山五輪男氏に聞く

 2023.06.30  BJCC

「ノーコード開発の「失敗しない導入」のために知っておくべきこととは——日本ノーコード推進協会理事の中山五輪男氏に聞く01

難解なコードを書かずにアプリケーションやWebサービスを開発できる——。そんな「ノーコード開発」が今、注目されています。

アプリ開発というと、「プログラミング言語を学んで、ソースコードを書いて……」という難しそうなイメージがありますが、ノーコードツールを使うと、グラフィカルな操作画面上で、直感的な操作で必要なパーツを組み合わせて業務アプリの開発を行えます。

エンジニア不足が深刻化する中、導入を検討する企業が増えていますが、ノーコード開発を正しく理解し、あらかじめ導入の目的や用途を定めておかないと、せっかく導入したツールが宝の持ち腐れになってしまいます。

なぜ今、ノーコード開発が注目されているのか、どんな領域の開発に向いているのか、導入にあたってはどんな準備が必要なのか——。導入に向けて知っておくべきことを、日本ノーコード推進協会で代表理事を務める中山五輪男氏にお聞きしました。

ノーコード開発が注目されている理由

── そもそもノーコード開発とはどのようなものなのでしょうか。

中山五輪男: JavaやPerl、Pythonなどのプログラミング言語を使うことなく、アプリやサービスを開発する手法のことをノーコード開発といいます。昨今、話題になっていることから新しい手法と思われがちですが、1990年代に登場した、ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作でWebページを作成できるWeb制作ツールなどは、ノーコードの先駆けと言えるでしょう。

ツールとしては、Webアプリや業務アプリ、Webサイト、ECサイトなどを開発するためのものがリリースされており、サイボウズのKintone、ヤプリのYappli、Googleの AppSheet、 アステリアのPlatioをはじめ、多種多様なツールが登場しています。RPAのツールもノーコードのものが多いですし、最近ではAI系のツールも出てきています。ツールの数は、日本でだいたい200種類前後で、海外も合わせると500種類を超えています。

利用者も増えており、IDC Japanの調査によると、2023年には新たに開発されるアプリケーションのおよそ6割がローコード/ノーコードプラットフォームで開発されるようになると予測されています。

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【中山五輪男氏プロフィール】1964年5月 長野県伊那市生まれ。 法政大学工学部電気工学科卒業。 複数の外資系ITベンダーさらにはソフトバンク、富士通を経て、現在はアステリア社のCXO(最高変革責任者)ならびに自身が立ち上げたノーコード推進協会の代表理事として幅広く活動中。

── なぜ今、ノーコード開発が注目されているのでしょうか。

中山五輪男: ノーコード開発が注目されている理由は大きく2つあると思います。

1つはデジタル人材の不足です。エンジニア不足が深刻化している昨今、大企業でもデジタル人材の確保が難しくなっており、中小企業はさらに厳しい状況です。

社内にデジタル人材がいないと、ITによる課題解決を外注せざるをえなくなり、その結果、SIerに任せきりにしてITの主権を手放してしまうケースも少なくありません。そうすると、社内で正しいIT投資の判断ができなくなり、必要以上の投資をすることにもなりかねません。

こうした背景から、SIerへの丸投げをやめて「自分たちでつくる文化」に変えていこう、と考える企業は少しずつ増えていると思います。

また、社内にデジタル人材がいたとしても、大規模な案件に時間を取られて、現場の課題解決の対応まで手が回らないケースもあります。その点、ノーコードはシンプルな業務アプリの開発に向いているので、課題がわかっている現場の人間が自らの課題を解決するための手段としては有効です。

もう1つはリスキリングのニーズが高まっていることです。これまで、ITで課題を解決する際には、IT部門の担当者が現場のスタッフに話を聞いて、要件をまとめて必要なサービスを開発する——というものだったわけですが、課題をわかっている現場の当事者が課題解決のためのアプリを自分で開発できるのなら、それに越したことはありません。ノーコードのツールによってそれが可能になれば、業務現場のITスキルの底上げにもなりますし、エンジニア不足の1つの解決策にもなります。

実際に、ITに詳しくなかった女性社員が、RPAのノーコードツールを使って現場の課題を解決し、今やコンサルタントとして活躍している事例があります。ご本人の努力のたまものではありますが、夢がある話ですよね。

また、住宅設備機器大手のLIXILが約4000人の現場社員向けにGoogleのAppSheetというノーコードツールを導入し、およそ1万7000のアプリを開発したという事例もあります。このアプリのうち、680ものアプリが実際に使われているというのも興味深いですね。

ノーコード開発のメリットと課題

── ノーコードはどのような領域の開発に向いているのでしょうか。

中山五輪男: 在庫管理や出勤管理、取引先管理、社内設備の管理など、簡単なデータを管理するようなアプリの開発に向いていると思います。多くのノーコードツールにはテンプレートも用意されているので、それをカスタマイズしてつくることも可能です。

ノーコード開発に向いていないのは、外部システムやデータベース、IoT機器などとの連携が必要なアプリ・サービスですね。高度なシステムの開発は難しいので、そこはIT部門やSIerと一緒に開発することになります。

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── いいことづくめに見えるノーコード開発ですが、課題はありますか?

中山五輪男: 1つは先ほどもお話ししたように、簡単なアプリケーションしかつくれないところですね。拡張性のあるアプリをつくるには、プログラミングの知識が必要です。

もう1つは、目的が明確でなく場当たり的な導入をすると、なかなかうまくいかないところですね。例えば、リスキリングを目的にノーコード開発を推進するなら、野良アプリなどは気にせず、どんどんつくってもらえばいい。でも、外につなげるアプリをつくるならIT部門の統制のもと、セキュリティを確保できるようにするなど、ノーコード開発がリスクにならないようにすることも重要です。

最後は、クラウドサービスが多いゆえ、何らかの事情でツールの提供が終了したら、アプリが使えなくなる可能性があることです。信頼できる企業のツールを選ぶことも重要ですね。

導入を成功させるために知っておくべきこと

── ノーコード開発を検討する企業の中には、どこから手をつければいいのか迷っているところも少なくないと思います。どのようなプロセスでノーコード開発を推進すればいいのでしょうか。

中山五輪男: ある自治体では、各課にDX推進リーダーを置いて開発を進めています。リーダーがアンケートをとって課の中の課題を洗い出し、ノーコード開発で解決していく——といったやり方です。

基本的にはこのような形で進めるのがいいと思うのですが、ITが普及していない組織ではそれが難しい。導入を検討する企業同士がこうした課題について話し合い、ナレッジを共有できる場が必要だとわかったので、2022年8月、ノーコード開発ツールベンダーとともに「日本ノーコード推進協会」を立ち上げました。

2023年5月には、日本ノーコード推進協会のプログラムとして、自治体DXの推進を支援する「ノーコード宣言シティー」を開始しました。導入の相談を受けたり、導入を検討している自治体同士の横のつながりをつくったりするための場を提供するもので、今後は一般企業向けにも広げていく計画です。

── ノーコード開発を成功させるために、企業が押さえておくべきポイントは何でしょう?

中山五輪男: 開発をリードする人が、良いアプリを作ろうとしすぎないことですね。組織でノーコード開発に取り組む際に起こりがちなのですが、開発リーダーに任命された人ががんばりすぎて、うまくいかなくなるケースもあるんです。

そもそもノーコード開発は、業務部門の人が仕事をする上でのちょっとした困りごとや、効率化したいことを、コードを書かずにアプリやサービスとして開発できるのがいいところなんです。

にもかかわらず、ノーコードツールなのにJavaを組み込んだりしてがんばってしまうと、逆に使いづらいものができてしまうこともあります。

実際に、そういうことが起こったという話はよく聞きます。ある会社では、アプリを作り込み過ぎてしまいがちな担当者に対して社長が「君はアプリをつくるのではなく、作り方を教える側になってくれ」とオーダーしたところ、現場の開発が進んでうまくいくようになったそうです。

── これからノーコード開発はどのように進化していくとお考えですか?

中山五輪男: これからはアプリ開発の民主化がさらに進んでいくはずで、今はまさに転換期といえるでしょう。

例えば今、注目されているChatGPTは、用件を正しく伝えればコードを書いてくれますよね。今後はこうした生成AIとノーコードツールがアプリをつくっていく時代になるでしょう。

その時に大事なのは、「問いを立てる力」なんです。自分が抱えている課題をいかに的確にChatGPTに伝えるか、いかに正しく要件を定義してノーコードツールに落とし込むか——。業務部門の人たちが、こうした新たな武器を使いこなせるようIT部門が支援すれば、日本企業はもっともっと成長できるはずです。

【聞き手・構成・執筆:後藤祥子(AnityA)】

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