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ペーパーレス、改正電帳法...
企業トップよ、今こそ企業運営に不可欠の文書管理を見直す時だ
——「文書管理」のプロ、溝上卓也氏に聞くDX時代の文書管理法

 2022.01.11  BJCC

ペーパーレス、改正電帳法...企業トップよ、今こそ企業運営に不可欠の文書管理を見直す時だ——「文書管理」のプロ、溝上卓也氏に聞くDX時代の文書管理法01

企業がビジネスを進めていく上で欠かせない「文書管理」。発注書や領収書といった取引関連の帳票だけでなく、現場で業務を進めるための基礎となる規程や手順書類、さらには日報や案件報告書といったさまざまな文書が日々の業務の中で作られています。

これらの文書をルールに則って管理し、必要に応じて速やかに参照できるようにすることは、業務を円滑に進めるために必要なだけではなく、コンプライアンスを維持しながら事業を展開していくためにも欠かせません。ITがビジネスを成長させるために不可欠のものとなって以来、企業ではこうした文書を電子化し、効率的に管理、活用する取り組みが続けられてきました。

この「文書の電子化」の流れが今、2020年以降のコロナ禍や、2022年1月から施行される「改正電子帳簿保存法」によってさらに加速しています。「紙の電子化」がもはや避けられないものとなる中、企業はどのような方法で「真に企業活動の糧になる文書管理」をしていけばいいのでしょうか。

「紙の電子化を推進するにあたっては、紙を前提としていた業務のあり方を見直す必要がある」——。こう話すのは、長年、電子文書コンサルタントとしてさまざまな規模の企業で「業務プロセスの変革を見据えた紙の電子化」を支援してきた溝上卓也氏です。

溝上氏は、日本におけるITの黎明期からストレージソリューションの開発に関わり、現在は「文書管理のエキスパート」として、文書情報管理のスキルを備えた人材の育成に注力している「紙の電子化のプロフェッショナル」。そんな溝上氏に、「ビジネスの価値を最大化するための紙の電子化と文書管理のあり方」についてお話を伺いました。

ペーパーレス、改正電帳法...企業トップよ、今こそ企業運営に不可欠の文書管理を見直す時だ——「文書管理」のプロ、溝上卓也氏に聞くDX時代の文書管理法02

溝上卓也氏プロフィール:「ビジネスプロセスの変革を考えた上での紙の電子化」を支援するコンサルティング会社「TK業務企画」代表。1981年に株式会社日立製作所に入社。メインフレーム磁気テープ装置、光ディスク装置といったストレージデバイスの開発に従事。その後、日立ソフトウェアエンジニアリング、日立ソリューションズで、光ディスクライブラリ装置を使用した応用システムの開発、SE、販売などを行う。社外団体活動として、次世代電子商取引推進協議会(ECOM)、電子記録応用基盤フォーラム(eRAP)、日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)などで電子文書管理に取り組み、記録データのマイグレーションの提唱などを行った。公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)では、文書情報マネージャーの育成支援も手がけている。

コロナ禍で企業の文書管理に対する意識はどう変わったか

—— 2020年頃から始まった「コロナ禍」は、企業の「文書管理」に対する意識に、どのような変化を与えたと見ておられますか。

溝上卓也 文書管理コンサルタントとしてさまざまな企業の方の話をお聞きしていますが、企業によって意識の差が広がっているように感じます。

やはり多いのは、コロナ禍に伴う緊急事態宣言の発出で急きょ「テレワーク」を導入したところ、その過程で、これまでの文書管理のプロセスに課題が見つかったというケースですね。「紙とハンコ」による承認や決裁のルールが変えられず、そのためだけに社員の出社が必要になった会社も少なくないと聞いています。

企業により、何とか今回の緊急事態はしのげたので引き続きぼちぼち対応を続けていく、少なくともテレワークに対応できる程度に、特に変える気はないと、対応はさまざまです。

一方で、今回のコロナ禍を契機に、そうしたテレワークに伴う紙の電子化や管理方法の改善に加え、「企業全体としての文書管理のあり方」の本格的な見直しに取り組み始めた会社もあるようです。

どの企業にも共通するのは、いずれの場合も「社長をはじめとする経営陣の文書管理に対する意識」が、そのまま会社としての文書管理への意識に表れている点だと思います。

文書管理は経営に関わる問題ですので、基本的に改革はトップダウンで進みます。トップが「文書の電子化」を「紙の文書をスキャナーでデータに変換すること」としか捉えていなければ、文書管理のプロセスをさらに上のレベルに高めていくことは難しいのが現実だと思います。

—— 経済産業省の「DXレポート」では、企業が扱う情報の単純なデジタル化を「デジタイゼーション」、情報がデジタルであることを前提に業務プロセスの最適化を行うことを「デジタライゼーション」と呼んでいて、その先に、データから新たな価値を生みだす「DX」があるとしています。トップの理解がないと、企業が「デジタライゼーション」や「DX」へと進んでいくことはできないということですね。

溝上卓也 そうです。「電子化」を単に「紙の文書をスキャンすること」と捉え、旧来の「紙」が介在する業務プロセス自体を変えられなければ、この先、「真の電子化の価値」を享受できなくなってしまいます。

紙の電子化といえば、直近では2020年に行われた「電子帳簿保存法」(電帳法)の改正が大きなトピックです。改正電帳法は2022年1月1日に施行され、ポイントの1つは「スキャナーによる電子保存」の要件が緩和されたこと。事前に申請をしなくても、電帳法の要件を満たす会計システムやスキャナーがあれば、すぐに電子保存が始められるようになりました。

電帳法のスキャナ保存要件の緩和は、これまでも何度かあり、多くの企業が「紙を介した業務プロセスを変えずに」書面のスキャニングを始めてしまいました。忘れがちですが、そもそも「紙をスキャナーで電子化する」という行為そのものが時間とコストの無駄になる——という側面もあります。並行して、業務プロセスを紙の介在しないものに刷新する取り組みを進めるべきですが、多くの場合、そうはなっていないのが実情です。

改正電帳法における「電子取引の電子データ保存」の要件変更は、紙のプロセスが残っている企業にとって、特に影響が大きいものでしょう。従来の電帳法では、電子取引に関わるデータについては、紙に出力したものを保存しておくことが容認されていましたが、2年間の緩和措置はあるものの改正によって「電子保存」が義務化されます。紙で出力したものを書面として保存しておいても、それは電帳法上の証跡としては認められなくなります。

総合的に見て、ビジネスプロセスの最初から最後までを一貫して電子化したほうが効率が良いことは明白ですが、トップのかけ声がなければ、そうした取り組みはなかなか進まないでしょう。現場任せにしてしまうと「業務プロセスの一部分のみの電子化」が進んでしまう事態になりかねず、これではせっかくの電子化が価値を生まなくなってしまいます。

「紙の電子化」を考える上で最も重要なことは

—— 企業が「DX時代の文書管理」を実現していくためには、どのような意識を持つべきなのでしょうか。

溝上卓也 デジタル化を考える際に「紙の電子化」だけを考えるのではなく、今やっている業務そのものを見直すこと。それをどう変えれば、業務に関わるプロセス全体を「電子化」し効率化できるのかを一から考えてみることが必要です。

例えば近年、「デジタルによる業務の効率化、自動化」というテーマで「RPA」(Robotic Process Automation)が注目されていますが、RPAで、きちんと成果が出せている企業というのは、ツールの導入よりも先に、業務プロセスの見直しと改善を行っています。逆に業務プロセスに手を付けず、現状のプロセスの一部だけをロボットに置き換えるようなやり方では効果は限定的ですし、将来性も見込めません。

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—— 業務プロセスの見直しは、具体的にどのように進めればよいのでしょうか。

溝上卓也 まず、会社で行っている業務を、その性質によっていくつかに分類し、それぞれに責任者を立てて、業務フローを整理する——というところから始めるのが一般的です。その業務フローに、「どのような帳票が必要なのか」「それぞれの業務がどう関連していくか」を分析し、それらを紐づけて整理していくところから始めると、徐々に動きはじめるケースが多いように思います。

気を付けるべきポイントは、これまでの「紙を使ったやり方」に引きずられることなく、あくまでも「業務フローと、必要なデータ」の視点でプロセスを見直すことです。

電子文書管理へ移行しようとする企業でありがちなのが、今までに使ってきた紙の帳票や文書を前提に「電子化」を考えてしまうことです。推進部門に総務部門などがアサインされて、電子化を進めるケースだと、業務の流れの全体像が見えないまま、既存の紙書類を整理するように、データの分類などを考え始め、そこから先に進めないといった状況が起きがちです。

文書の電子化は、「業務の流れ」全体を理解し、無駄を省き、改善していくための取り組みの一部だと理解することが重要です。

—— そうなると、取り組みを進める担当者は、全社の業務の流れを俯瞰できる立場にある必要がありますね。

溝上卓也 それが、文書管理の改善が「トップダウン」でないと、うまく進まない理由の1つでもあります。実際に文書を扱っている現場の社員は、自分が手掛ける業務には精通していたとしても、全社の視点から「それを何のためにやっているのか」「どうしてそうする必要があるのか」を把握できていないケースも少なくありません。

—— 「業務プロセス」の整理と改善は、業務の属人化を防ぎ、現場のナレッジを横展開できるという点でもメリットがありそうです。

溝上卓也 ある程度の規模の会社になると、多くの場合、現場向けの「業務規程」や「手順書」と呼ばれる文書がありますが、完璧にそのルールどおりに仕事が進められていることは、それほど多くないと思っています。なぜなら、日本のオフィスワーカーは非常に真面目で、規程や手順書が実際の業務に即していなかったとしても、自分たちで何とかしてしまうことが多いのです。それが「属人化」の発端になります。そうした「属人化」が、良くない形で進み、規程や手順書にないことをやるのが常態化してしまうと、問題や事故が起こる頻度も上がります。

大切なのは、そうした問題や事故が起こったときに、当事者を責めたり、罰したりせず、「なぜ、そうした状況になってしまったか」という根本的な原因を考えて、改善していくことです。もし規程や手順に問題があれば、それを直していくべきでしょう。それは「業務プロセスの全社的な見直しや改善」にも通じます。

そうした姿勢が会社にあれば、「属人的」な業務に対する見方も、少し変わってくると思います。誰かがやっている「属人的」な仕事の進め方が、もし理にかなっていて、うまく成果を出せているのであれば、それを吸収し、横展開していくことで、全社の効率化や価値創出につながる可能性も出てきます。

—— 「属人化」が社内競争の優位性になっているような古い体質の会社では、そうしたことは難しいかもしれませんね。

溝上卓也 その点では、社員一人ひとりが「自分の仕事のノウハウを分かりやすい形で可視化し、広く共有することが会社の利益につながる」——ということを理解する必要があるでしょう。加えて、積極的にノウハウを共有した社員に対する評価なども考える必要があります。そうした社風も、やはり「トップダウン」でないと醸成は難しいと思います。

その点では、今回のコロナ禍や、DXへの取り組みは、新たな企業文化をトップダウンで作っていくきっかけにできるかもしれません。

紙の電子化を進める上で注意すべきことは

—— そのほかに、紙の電子化を進める上で注意すべきことはありますか。

溝上卓也 少し技術寄りの話になりますが、文書を電子化する場合には「データをどう保存するかをしっかりと設計しておく」こと、そして「データとアプリケーションを分けて考える」ことがポイントです。

企業が文書を電子化し、保存する場合に最も注意すべきなのは「データ移行」です。データ移行は、基本的に難度が高く、データ紛失の原因にもなります。つまり、できるだけ一度保存したデータを、別の保存先に移すことは避けるべきなのです。

私は長く光ディスクの開発やソリューション提供に携わってきました。開発当時は「企業が必要な年数だけデータを保存しておける」ことをうたっていましたが、技術の進化やビジネス上の理由などから、現在、光ディスクはデータ保存用メディアの主流ではなくなっています。

これは光ディスクに限った話ではなく、物理的な機器やメディアというのは、数十年以上にわたって、変わらず使い続けられるものではないのです。その点では、「Box」をはじめとする、近年発展が目覚ましいクラウドストレージサービスには期待しています。

また、データの保存時には、ユーザーの利便性や使い勝手を高める「データ共有」にフォーカスした層と、ビジネス上の証跡となるようなデータを長期にわたって厳格に「保存」することを目的とした層を分け、ライフサイクルを考慮した管理を意識する必要があります。事前にしっかりと設計を行い、それに適したソリューションを選択して、電子化後に余計な「データ移行」が起こらないよう計画しておくべきでしょう。

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それと関連して、ユーザーがデータを登録、参照するためのアプリケーションは、データのレイヤとは切り分けて選択すべきです。

例えば、多くの「ワークフロー電子化」のソリューションが市場にありますが、そのほとんどが、ワークフロー上を流れる決裁などのデータを、ソリューション内に閉じた形で蓄積しています。アプリケーションの進化のスピードは、ストレージ以上に速いものです。もし、ベンダー側で継続的な開発の中止が決定された場合「データ移行」が避けられなくなります。

日本では、90年代に「Lotus Notes」(IBM Lotus Notes/Domino)というソリューションが多くの企業に導入されました。Notesは非常に良くできたソリューションで、企業はこぞって、その上に業務フローを回すためのアプリケーションを開発し、長く使い続けてきました。しかし、データベースとアプリケーションが一体となったアーキテクチャだったために、その後の技術的なトレンドの変化や、ベンダーによる開発とサポートとの終了などによってデータ移行が必要になった際、大変な苦労をした企業も多かったと聞いています。

そうしたことを繰り返さないためにも、データとアプリケーションは切り分けて考えておくべきです。ソリューション内にデータを蓄積するような仕組みを導入する場合であっても、必要なデータは取り出して別に保存しておき、後から参照できるような方法を用意しておくといいでしょう。

目先の課題ではなく「ビジネスの変革」を目指して文書管理を進化させる

—— 話をお聞きしていると、文書管理の電子化を「トップダウンで全社的に進めていくことの重要性」がよく分かります。ただ、それをトップに理解してもらう上では、その取り組みがビジネスメリットにつながることを説明しなければなりません。

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溝上卓也 こうした議論を社内で進める場合、ツールの導入を伴うことが多いため、必然的にIT部門が上申役を担うことが多いのですが、私は、これはIT部門だけの課題にしてはいけないと思っています。

ここまでお話ししてきたように、業務プロセスの見直しを伴う文書管理の電子化は、全社的な取り組みになります。IT部門だけでなく、総務、法務、最近であれば「DX推進部」のような組織を設けている企業もあると思いますが、そうした部署の担当者が集まって議論を行い、トップに対してアピールをし続けてほしいですね。それが継続的に行われることで、経営側も優先度の高い課題であることに気付くだろうと思います。

その際には、「紙の電子化」ではなく「仕事のやり方そのものを変えていく」という視点で、「企業としての競争力を高めるためにビジネスプロセスを改善していくにはどうすべきか」を主題にすると、経営者に響きやすくなるかもしれません。ビジネスプロセス改善に取り組めば、それは自然と文書管理の方法を改善することにもつながります。

目の前のきっかけとしては、先ほども挙げた「改正電帳法」への対応があると思います。内容を見れば、国が企業に対して、「紙」よりも「電子」を中心として文書の保管を求めていく方向性にあることが分かります。これを契機に、本格的な文書管理の電子化を進めようと考える企業も増えています。

ただ、これまで多くの企業で行われてきた電子文書の「保管」レベルでは、改正電帳法の求める要件を十分に満たすことができません。

改正電帳法では、証跡となる電子文書の「保存性」について、タイムスタンプの付与、改ざんがないことの証明、削除や修正に関する履歴の保存、電子取引データの保存期間(最長10年)など、細かい要件を罰則とともに定めています。こうした要件を満たすためには、これまでファイルサーバで行っていたような「保管」ではなく、「保存」のための仕組みが必要になります。

最近、企業はデジタル化による「情報共有」や「情報セキュリティ」の側面については敏感になってきた印象がありますが、業務データの「保存」に対する意識は、まだまだ低いと言わざるを得ません。

業務データや情報の保存については「ISO 15489」という記録管理の国際標準などもあります。内容は決して簡単ではありませんが、JIIMAの機関誌などに解説なども掲載されていますので、文書管理の電子化に本格的に取り組もうとしている企業の担当者には、一読いただきたいと思います。

—— 新しい業務プロセスを根付かせていく上では、エンドユーザーにとって使いやすい文書管理の環境を整備することも重要ですね。

溝上卓也 業務現場の担当者レベルでは、「特に意識しなくても、作業を終えるとデータがしかるべき場所に、ログとともにセキュアに保存される環境」が理想ですね。近年、boxをはじめとするビジネス用途を考慮したクラウド方のコンテンツ管理には、「共有」とは別に「保存」のためのレイヤが用意されており、オプションとして利用することも可能になっています。そうした機能をうまく利用することも対応策の1つといえるでしょう。

今、まさに文書管理の電子化を検討している企業には、その取り組みを最低限の「テレワーク対応」や「法制対応」で終わらせず、将来的な企業としてのあり方を見据えて、業務プロセス全体の改善を行うことにチャレンジしていただきたいと思います。

自社が「どう変わっていかなければいけないか」、その際に「どんな情報をどう守るべきか」について考えていけば、業務プロセスをどのように変え、どのようなツールでどのように文書を扱うべきなのかが、おのずと見えてくるはずです。

【取材・構成:後藤祥子(AnityA)執筆:柴田克巳】


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