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BJCC第15回Meetup開催レポート:
「育児で現場を離れたらキャリアはおしまいですか?」
——世間の思い込みを覆した3人に聞く、「育休を武器に変える方法」

 2021.11.18  2023.01.30

より便利で効率的なデジタルワークスペースのありかたを考え、学び、実践していくことを目指す企業のためのコミュニティ「Box Japan Cloud Connections(BJCC)」。2021年9月29日に開催されたイベントでは、「リモートワークのその先へ〜育児とITと〜」と題したテーマのもと、働き方改革の旗手、沢渡あまねさんと子育て世代の3人によるディスカッションが展開されました。

少子高齢化が進む日本は労働人口の減少がとまらず、人手不足に苦しむ企業が少なくありません。その一方で、貴重な戦力である子育て世代や介護世代が「これまでと同じように働けない」という理由で出世を諦めたり、会社を辞めてしまったりするケースが後を絶たない状況です。

こうした事態を変えていくには、どうしたらいいのか——。今回のイベントでは、育休を取得して働き方に悩み、とまどい、それを乗り越えた3人の子育て世代の方々をお招きして、企業と社員の両方が成長できる仕組み作りとITの活用について考えます。

イベント登壇者プロフィール

ファシリテーター:沢渡あまね氏

作家/ワークスタイル&組織開発専門家。あまねキャリア CEO/なないろのはな 浜松ワークスタイルLab取締役ほか。350以上の企業・自治体・官公庁 で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディ ア出演を行う。著書『バリューサイクル・マネジメント』『職場の科学』『職場の問題地図』ほか。

「育児で現場を離れたらキャリアはおしまいですか?」——世間の思い込みを覆した3人に聞く、「育休を武器に変える方法」01

登壇者: 小田木朝子氏

株式会社 NOKIOO取締役。公私に渡り、子育てしながら働く人たちをサポート。Voicy『今日のワタシに効く両立サプリ*』パーソナリティ。「仕事も家族も自分も大事にしたい。」そんなビジネスパーソンが、日々起こる変化に向き合い、仕事がもっと楽しくなる"知恵とヒント"を配信中。https://voicy.jp/channel/1240

「育児で現場を離れたらキャリアはおしまいですか?」——世間の思い込みを覆した3人に聞く、「育休を武器に変える方法」02

登壇者:momo氏

とある企業で情シスとして働く2児の母。自身のTwitterやnoteでこれまで働いていた環境や現在の悩みを発信、多くの支持を得ながら、引き続き奮闘中。今の目標は「毎晩子どもたちに美味しいごはんを作ってあげること」

「育児で現場を離れたらキャリアはおしまいですか?」——世間の思い込みを覆した3人に聞く、「育休を武器に変える方法」03

登壇者:篠原大輔氏

株式会社ポケモンの情報システム部で社員が働きやすい環境作りに日々奮闘している3児の父(うち2人は双子)。双子の誕生をきっかけに約1年の育休を取得。育休後はフルリモートで育児と仕事を両立。好きなものはゲームとオーディオ、好きなことはおもしろいSaaS探し。

「育児で現場を離れたらキャリアはおしまいですか?」——世間の思い込みを覆した3人に聞く、「育休を武器に変える方法」04

育児は仕事と違って「何もかもが」思うように進まない——育児を経験したからこそ分かること

沢渡あまね 最初のテーマは「みなさんの育休・育児体験談」です。まず、篠原さんから話をお聞きしましょう。

篠原大輔 4歳の長男と双子の三児の父です。実は長男が生まれた時は、ほとんど育児に参加していませんでした。当時は「夜まで会社にいる仕事人間」だったので、朝から晩まで働いて、家に帰ったら、“お手伝い程度”のことをして疲れてる嫁をいたわりつつ過ごしていたのです。

働き方を変えるきっかけになったのは、次の子供が双子だったこと。もちろん、とてもうれしかったのですが、半面、「大変なことになったぞ」と青ざめる自分もいました。

というのも、育児はいろいろと大変なことが多く、それを一人で頑張っていた妻が育児ノイローゼになりかけたことがあったのです。その大変さが2倍に増えるとしたら、自分がきちんと休みをとってサポートするしかない——と考えるようになりました。

沢渡あまね 覚悟が決まったのですね。

篠原大輔 そうですね。そこで初めて、社内の育休制度について調べてみたところ、最大1年間、取得できることが分かったので、妻が産休に入るタイミングで育休に入る準備を始めました。

そんなふうにして育休に入ったのですが、今にして思うと、最初はどこか他人ごとで育児をしていましたね。何しろ、本格的な育児は初めてだったので「何をどうしたらいいかが全く分からなかった」というのもあったのですが、すぐには当事者意識を持てなくて。妻からそれを指摘され、いろいろ話し合いながら育児をしていくうちに、だんだん自分ごととしてとらえられるようになりました。

今では、前の晩に保育園の準備をして、朝はご飯を食べさせて保育園に連れて行って、夕方になったらお迎えに行ってお風呂に入れて、遊んで寝かしつけて——といったことを、仕事をしながら一通りこなしています。1年経ってようやく「育児をしてます!」と胸を張って言えるようになりました。

こんな風に育児と仕事を両立できるのは、会社がリモートワーク環境を用意してくれているからこそだと思います。ほぼ会社に行かない状態で仕事の成果を上げながら、育児にも主体的に参加できています。

沢渡あまね 篠原さんが育休に入るタイミングで、会社のリモートワーク環境は整っていたのですか?

篠原大輔 情報システム部門がリモートワーク環境を整えてはいましたが、当時はほぼ、使う人はいなかったですね。ただ、僕が育休から復帰するタイミングで、コロナ禍に伴う緊急事態宣言が発出され、復帰の1〜2週間前くらいから比較的スムーズに全社がリモートワーク体制に移行しました。

最近ではリモートワークが定着し、育休に対する理解も進んできているので、僕が育休に入ったときより育休を取りやすくなったように思います。

沢渡あまね たしかに育児は、実際にやってみないとなかなか当事者意識を持てない、というのはありますよね。

次はmomoさん、いかがですか?

momo 私は育休中、「何も社会に貢献できていない」という虚無感に押し潰されていました。限られた生活圏内で見かけるコンビニの店員さんや宅配便のお兄さんが輝いて見えて、感動で泣いてしまうほど気持ちが不安定になって。今にして思えば、育児ってすごいことなのだから、もっと自分に自信を持って良かったはずなのですが……

なぜ、そんなふうに思うようになったかというと、子育てをしていた時、会社の上司に「子供がいるからって、簡単に早退や遅刻ができると思うなよ!」と言われ続けたことが原因の一つだったと思います。これがとにかくつらくて……。

小さい子供は、とかく熱を出すことが多くて、保育園から「お迎えにきてください」と電話がかかってくることも少なくありません。そんな時、毎回、上司からこんな風に怒鳴られていたんです。

上司に謝り、保育園の先生にお迎えが遅くなったことを謝り、子供に「辛い思いをさせてごめんね」と謝り……。謝ってばかりの毎日で、「働きながら母親としての務めを果たしているのに、どうしてこうも謝ってばかりいるんだろう。私の何が悪いんだろう」と自問自答する日々でした。

当時は「“上司と考え方が合わない”という理由だけ会社を辞めるのは悔しい」と思っていました。でも、幾つかの他の会社を経験し、たくさんの育休の形を見てきた今、思うのは「“理不尽な思い込み“には耐えなくてもいい」ということですね。特に、経営者が子育てに対する理解がなく、つらく当たってくるのなら辞めればいいし、頑張りすぎなくていい、と思うようになりました。「辞める勇気も大事」ということを学んだと思います。

沢渡あまね 「社外に出て、さまざまな価値観を知る」ということは、とても重要ですね。外に出てみたら、「元の会社では常識だったことが非常識だった」ということはよくあることで、momoさんも外の世界を知ったからこそ、「元の会社の常識が時代遅れで、そんな価値観に従う必要はない」ことが分かったわけです。

それを理解した上で、会社が理解してくれそうなら、育休を取得してもハンデにならない働き方を自ら作っていくのも一つのやり方です。ただ、そうはいっても周りの価値観が凝り固まっていて変わりそうもないなら、関わるコミュニティを変えるのが一番です。それは「正しく自分が勝てる環境」で活躍することですから、決して「逃げ」ではありません。

このような経験に向き合い、つらかったことも含めてTwitterで発信して自らロールモデルになろうとしているmomoさんは素晴らしいと思うし、後に続く人が増えるといいですよね。

次は小田木さんの経験談をお聞きしましょう。

小田木朝子 最初の育児は、とにかく失敗が多かったですね。私は産休に入る時、篠原さんのように「ここから先は育児に切り替えるぞ」と覚悟することなく、仕事をしている時と同じ気持ちのまま産休・育休に入ったので、いざ子育てが始まった時には「仕事をしていた時に比べて、何も生み出せていない感覚」にとても苦しみました。

育児はすぐに結果が出ないし、自分の思う通りにいかないことが多いですよね。しかも初めての子育てだと、どうしたらいいか分からないことばかりです。そんな子育てを、これまでの仕事と同じものさしではかってしまうと「何もできていないし、成果も上がっていない」という風に感じてしまうんです。短期的な成果が出せたり、時間をかけてでもやれば終わったりする「仕事」と「育児」は真逆のものなのに……。

そうして気持ちが不安定になると、仕事から帰ってきた夫に、「今日、私はいかに大変だったのか」をやたらアピールしまくったり、アンパンマンマーチの「生きる意味を問う歌詞」のところで涙ぐんでしまったりと、随分、家族に心配かけてしまいました。

沢渡あまね そこから気持ちが切り替わったきっかけは何だったのでしょう?

小田木朝子 結論から言うと、「仕事の勝ちパターンを変えた」ということですね。

実は仕事に復帰してからも、育児に関わるもやもやした気持ちは解消されなかったんです。子育てしながら仕事をしようとすると、子供のお迎えやお世話のために定時で帰らなければならないので、さらに仕事に時間をかけられなくなります。

そんな状態で、今までと同じやり方のまま仕事で成果を出そうとしても、難しいですよね。当時の私は、早く帰らなければならないことをハンデだと思いこんでいて、自由に残業できる同僚に嫉妬したり、「こんなに頑張っているのにどうして成果が出ないのか」と気持ちが空回りしたりして、どんどん追い詰められていきました。周りのアドバイスも素直に聞けなくなり、あんなに好きだった仕事が嫌いになっていくという負のスパイラルに陥ったのです。

そうやってもがいているうちに、「このままではだめだ、仕事の成果の出し方を変えなければ」と思うようになったのです。

沢渡あまね そこで「勝ちパターンを変えた」のですね。

小田木朝子 それが一番効きました。これまでの「一人で仕事を抱え込んで、長い時間をかけてこなしていく」いう仕事の仕方から、「チームの仲間と連携して、チームの成果に対してコミットする」「重要なことのみに集中する」という方向ににシフトしたところ、全てがうまく回りはじめました。

そうして育児をしながら仕事の成果を上げられるようになってくると、気持ちに余裕が出てきて、育児と仕事の両方から学びが得られるようになりました。

例えば、短期的な成果ばかりに固執しなくなり、「何のために働くのか」ということを考えるようになりました。育児は「物ごとはなかなか思った通りにいかないし、成果が出るまでには時間がかかる」ということを教えてくれますよね。それが分かると、仕事ですぐに成果が出せない自分を受け入れられるようになるし、じっくり時間をかけて成果を出すことの重要性も分かってきます。

沢渡あまね これまでとは異なる「自分なりの勝ちパターン」を見つけるというのは、育児や介護で「これまでのように働けなくなる人」にとって、重要な視点ですね。そこにはITの存在が欠かせないものとなるはずです。

育児で現場を離れる時間をチャンスに変えるには——世間の思い込みを覆す方法

沢渡あまね 次のテーマは「育休・育児に対する世間のバイアス・思い込み」です。育児や育休に対する世間の思い込みや決めつけについて、みなさんはいろいろと考えたことがあるのではないでしょうか。篠原さんは、育休を体験して直面した思い込みやバイアスはありましたか?

篠原大輔 企業の中には依然として「家に帰らず、がむしゃらに働いてこそ出世できる」という思い込みがあることは、育児休暇を取得してみて、あらためて実感しました。

うちの会社もそうなのですが、男性社員はとかく家に帰らないんですよね。今、役職に就いている人たちが夜遅くまで働いて昇進していったので、会社の中に「育休を取ったら出世コースから外れる」という空気があるんです。

こうした背景から、自分が育休をとることで「そこを変えてやろう」と強く思いました。「1年間、育児休暇をとるからこそじっくりと取り組める“育休を取りやすくする仕組みづくり”をやりきったら、こうした思い込みやバイアスは変えられるだろう」と思い、育休に入ったというのが正直なところです。

その結果、育休を取得しながら昇進できましたし、今も何ら変わることなく働き続けているので、目標は達成できたと思っています。ただ、世間ではまだまだ「育児は女性がするものだ」という雰囲気は残っているので、そこは変えていきたいですね。

育児休暇を取得しても成果を出しやすくする仕組みや制度をつくって「どうして育休や介護休暇をとれる環境があるのに取らないの」といえるような状況に持っていきたいです。

小田木朝子 momoさんと篠原さんの話をお聞きして一つ確実に言えるのは、momoさんのような仕事に対して誠実な社員や、篠原さんのような優秀な情シスがライフイベントを迎えたときに、「企業がどう対応するか」によって、「企業が成長するのに必要な人材を生かすか逃すか」が分かれる——ということですね。

ここで問題なのは、「ライフイベントを迎えた人材を大事に扱わないと、会社として大事な戦力を失うことになる」という危機感を持っている企業がまだ、少ないことです。

人材面での重大な影響があると思わずに、バイアスのかかった空気をそのままにしてしまったり、育休に入った人の働き方を尊重してパフォーマンスを発揮してもらう方向に持っていくことができなかったりする企業が少なくないような気がしています。

少子高齢化が進んで労働人口が減り続ける中、人材確保は企業の重要な課題の一つです。そこで「出産や育休でこれまでと同じような働き方ができなくなった人が、尊重され、活躍できるような組織」を構築できたとしたら、良い人材が集まってくると思うんですよね。

沢渡あまね たしかに昨今では「リモートワークが許されない会社は選ばない」という人も増えているといいますから、ライフイベントを迎えた社員の活躍を応援する企業にも、良い人材が集まりそうですね。小田木さんは企業のバイアスや思い込みについてはどう思いますか?

小田木朝子 育休を取得する側と企業側の双方に「業務の現場を離れることが、仕事やキャリアにとってマイナスになる」という思い込みが依然、根強いと思いますね。未だに育休を取ろうとすると「それってブランクだよね」「今だからこそできる経験を棒に振っちゃうの?」「出世コースを降りちゃうんだ」——といわれることも少なくないですから。育休を取得する側も「すみません、ちょっと休みます」という申し訳ないモードの人が多いのが現状です。

でも実際には、育休をとってこそ分かることが多いのも事実です。私も前述のように、育休をとって、仕事と育児の両立でもがき苦しんだからこそ、今までの仕事のやり方に疑問を持つことができたし、新たな勝ちパターンを身に付けることができたのです。

企業も個人も、もっと「現場から離れる期間をどう使うか」に意識を向ければ、「夫婦が競って育休を取るような未来」が見えてくるのではないかと思うのです。仕事以外のさまざまな経験が、仕事をする上でのパフォーマンス向上につながる——という価値観がもっと広がるといいですよね。

沢渡あまね 視聴者の方からチャットで「育休に入るときに『ご迷惑をおかけします』ではなく『パワーアップして帰ってきます』と言えるようになるといいですよね」というコメントが届きました。こんなふうになっていくといいですよね。

この話を聞いて思い出したのが、小田木さんが事業責任者を務める、育休者向けオンラインスクール「育休スクラ」の受講生のお話です。

育休中に育休スクラでマネジメントを学んだ人が現場に戻ったところ、上司がその成長ぶりに驚いたというんです。「彼女は休んでいる間にひとまわりもふたまわりも成長したようだけど、一体何があったんだ?」と。このような変化が起きれば企業も育休取得者も幸せですよね。

育休を取得して分かった「時間の価値と使い方」

沢渡あまね 次に、育休を取得して「仕事と育児に対する向き合い方や考え方がどう変わったのか」をお聞きしましょう。篠原さんはいかがですか。

篠原大輔 1年間の育休を終えて、ほぼ100%仕事人間だったのが、80%ぐらいを育児に使うようになりました。

そんな僕が育休を取得して実感したのは、世の中に仕事は(選ばなければ)いくらでもあるけれど、「生まれたばかりの自分の子供を育てる経験」は「その時の一度しかない」ということ。どれだけお金を積んでも、「失った子育ての経験」を買い戻すことはできないですよね。結局のところ、「自分がどこに納得して自分の時間を投資したいのかを考える」——という話になると思います。

沢渡あまね 「自分が“納得して自分の時間を投資したいのはどこなのか”を考える」——。これは神フレーズですね。

篠原 今の時代、お金は本気出せばいくらでも稼げます。もっとも、日頃から「なんとなく働く」のではなく「今、どんな人材が市場で価値があるのか」を考えながらスキルを上げていくことは欠かせませんが……。しかし、「自分の子供を育てる」という経験は、自分にしかできないし、自分だけでコントロールできることではない。私はそこに価値を感じ、自分の時間を投資したいと思った、ということですね。

沢渡あまね とても共感できるお話ですね。小田木さんは育休を経験して何が変わりましたか?

小田木朝子 育児を経験する前より、今の方が仕事を楽しめるようになった——というのは、大きな変化だったと思います。

仕事だけに固執しなくなったし、子育てと仕事の両方があるからこそスイッチの切り替えを意識するようにもなりました。育児と仕事にはシナジー効果があることも分かってきて視野が広がり、両方を楽しめるようになった——という感覚ですね。

1日24時間しかない中で、寝る以外の時間を「どんな心持ちで、何に費やすか」ということだと思うんですよね。そもそも、自分の勝ちパターンを変えることなく「つらい、つらい」といいながら仕事をしていたら、それを見て育った子供たちが「仕事ってつらいものなんだ」と思ってしまいますよね。それだけは何としても避けたい(笑)。

沢渡あまね たしかにそれはサステナブルじゃない。仕事も育児も楽しくするためにはどうしたらいいのか、どう工夫したらいいのか。参加者の皆さん一人一人が、自分なりの勝ちパターンを考えて、行動してほしいと思います。

仕事と子育ての「幸せな両立」とITの関係とは

沢渡あまね 最後のテーマは「仕事と子育ての幸せな両立とITの関係」です。

このテーマには2つの視点があると思うんです。1つは「仕事と育児を両立するために、自らITをどのように使っていくか」。もう1つは「組織として仕事と育児の両立を支援するために、ITとどう向き合うか」。情報システム部門で働くmomoさんは、会社としてどんな取り組みをしましたか?

momo コロナ禍に伴って、テレワークができるように環境を整えました。

2度目の緊急事態宣言が出るまでは、テレワークのテの字もないような会社だったのですが、これではまずいと思ってMicrosoft 365のFormsで社員にアンケートを取りました。すると「感染が怖いからテレワークしたい」という声が9割を超えていたのです。

このアンケートを経営陣に見せて「テレワークをできるようにした方がいいのではないですか?」と進言したところ、テレワーク環境の構築にゴーサインがでました。

まだ、毎日テレワークで働くというわけにはいかず、週1〜2回にとどまっていますが、社内から「子供に『おかえり』と声をかけられるのがとてもうれしい」という声も上がっているので、もっと推進したいと思っています。

沢渡あまね すごい行動力ですね。momoさんの取り組みには3つのポイントがありますね。1つは「自らテレワークできる環境を作った」ところ。テレワーク環境がないことを嘆くだけでは何も始まらないので、自分なりにできることをやって環境を整えていくのは大事なことだと思います。

2つめは社員にアンケートを取ったところ。ファクト(アンケート)を基に、「社長は気がついていないかもしれないですが、現場はこう考えていますよ」と、現場と経営の景色を合わせにいったのは重要なポイントです。このような形で社内世論を作っていくと、改革を進めやすくなります。

3つめは「現場の景色の共有」です。「帰宅した子供に『おかえり』と言えるのがうれしい」というのは、子供を持つ親の多くが思っていることであり、目指したい姿としてイメージしやすい。このようなビジョンを描いて共感者を増やしていくのは素晴らしい取り組みだと思います。

篠原さんはいかがですか?

篠原大輔 情報システム部門の人間として思うのは、「育児と仕事の両立に、もはやITは欠かせない」ということです。

リモートワークができるようにするのは当然のことですが、実はそれより大事なのが「業務の引き継ぎ」などの「ナレッジの共有」だと思うのです。実際のところ、育休に入ってこの部分が大きなハードルになることが多かったんです。

理想は、誰がいつ、どうなっても業務が止まらないよう、すぐ引き継げるような仕様書を作って誰もがどこからでもアクセスできるようにしたり、仕事が属人的になりすぎないようにしたり、複雑な仕事をシンプルにしたりすることだと思います。こうしたナレッジを常日頃、チーム内で共有しておけば、メンバーが育休や介護で現場を離れても仕事が回るはずです。実はリモートワークは、その後なんです。

いくらリモート環境ができていても、結局、そこがきちんと共有されてないと、本質とは全く関係ないところで苦労することになる。ITを使ってどこまで仕事のプロセスやナレッジを共有できるかが、育児と仕事の両立で成否を分けるポイントだと思います。

沢渡あまね たしかに、仕事の脆弱性を見つけて、どのような仕組みで補完していくか——という取り組みは、とても大事ですね。仕事も育児も「自分が倒れたら終わり」というような脆弱性が高い状態を作ってしまうと、立ち行かなくなります。

「自分がいなくても大丈夫」という状態を作るのは難しいかもしれませんが、少なくとも「育休中の人が仕事への関わり方を変えても業務が滞りなく進み、パフォーマンスも発揮できる」ようにするのが理想かもしれない。これはきっと育児も一緒ですね。

もう一つ大事なのは、こうした仕組みを作る上では、ITを使う側が「デジタルで気持ち良くなる体験」を取り入れることですね。現場がITを使った仕組みが便利だと思えば、それは現場に定着しますし、定着すれば現場の作業効率が上がります。この繰り返しが「経営課題をITで解決することにつながる」のではないでしょうか。

ITの仕組みを作る側の方々には、使う側が「ITを使って便利になった」「楽になった」「仕事の効率が上がった」「仕事が楽しくなった」と実感できるIT体験を作ってほしいですね。

「育児で現場を離れたらキャリアはおしまいですか?」——世間の思い込みを覆した3人に聞く、「育休を武器に変える方法」05

デジタルワークシフトを実現するには、「マインド」「スキル」「マネジメント」の3つが変わることが重要で、どれが欠けてもうまくいきません。育児や介護を経験した人は、この3つがいかに重要なのかをいち早く知ることができるので、ぜひ、この経験を広くシェアして、身の回りから変化を起こしてほしいと思います。これこそが、私たちができる「半径5メートル以内から始めるITの民主化運動」なのですから。

【執筆:後藤祥子】

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