<img height="1" width="1" style="display:none" src="https://www.facebook.com/tr?id=1294575427570876&amp;ev=PageView&amp;noscript=1">

社員数1000名を超え事業拡大を続ける国産総合コンサルティングファームが、いかにDXを実現したのか

 2024.01.09  BJCC

社員数1000名を超え事業拡大を続ける老舗コンサルティングファームが、いかにDXを実現したのか —— 。中島正太氏に聞く情シスの「あり方」-01

昨今、多くの企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)によるビジネス変革が急務となっています。

しかし、歴史のある組織や大手企業などは、"変化耐性の無さ"や"古い考え方"、"縦割り構造"といったさまざまな課題が、改革の手を遅らせているのが現状ではないでしょうか。

平成9年に設立され、現在は東京証券取引所プライム市場に上場している山田コンサルティンググループ株式会社。日本発の総合コンサルティングファームとして、1,030名(臨時従業員含む。2023年12月1日現在)の社員を抱える同社も、事業拡大の過程で多くの課題を乗り越えてきたといいます。

そんな老舗コンサルティングファームの情シス部門にて、組織変革の旗振り役を担っているのが管理本部情報システム室室長 中島正太 氏。DXに関わるプロジェクトを多く経験する中で学んだことや、組織の中で必要とされる情シスの「あり方」のヒントをお聞きしました。

【中島正太氏プロフィール】
2017年の入社後、社内情報システム部門の立ち上げやITインフラ構築、社内IT化推進、情報セキュリティ管理に従事。2020年より室長。Box Costomer Award 2021 テクニカル部門アワード受賞、2022年 Box Japan Approved Champion 認定。

社内変革に必要不可欠な、地道な手段とは

社員数1000名を超え事業拡大を続ける老舗コンサルティングファームが、いかにDXを実現したのか —— 。中島正太氏に聞く情シスの「あり方」-02

ーー DXによる組織変革は乗り越えるハードルが多くあります。創業から長い歴史があったり社員数が多い企業であればなおさらかと思いますが、中島さんはいかがでしたか。

当社は10年くらい前まで社員数500名に満たない組織でしたが、私が入社した2017年は約800名、現在は1000名を超えています。ここ数年で急速に拡大する過程で、社内のシステム環境の整備も同時に推し進めてきました。当社に限らずだと思いますが、何かを変えたり新しくするときは、抵抗感を覚える社員は少なからずいます。とくに長く在籍している社員ほど、慣れ親しんだ業務フローやツールを変えるのは不安ですよね。

私が入社後すぐに情シス担当として取り掛かった仕事でも、同様の課題を経験しました。社内の予定表ツールを変えるプロジェクトで、転職して3社目だったので、外部から見て不便に感じたことは声をあげるべきだと思ったので提案しました。実際に生産性も上がるイメージがあったのですが、社員の働き方や組織の文化をまだ理解していなかったので、当初はかなりの反発を受けました。既存ツールを使っている側は現状の不便さに気づいていなかったり、今まで当たり前にやっていたことができなくなることへの不満は相当なものだったからです。

最終的にはシステムを導入できて、今に至るまで不満の声も出ていないので結果的には良かったと思いますが、ここで大事なことを学びましたね。

ーー どのようなことを学んだのでしょうか?

当たり前に聞こえるかもしれませんが、コミュニケーションの大切さです。実際、社内変革はそれに尽きるかなと思います。コミュニケーションによって信頼を構築していくという本当に地道な手段ですが、これによって得られる結果が変わります。

例えば、Boxを導入した直近のケースでも、検討初期のフェーズは一部社員に大きな抵抗感がありました。「エクスプローラーに慣れているので変えたくない」、「ウェブブラウザからでは利用しにくい」、「フォルダー構成やアクセス権が違うのでわからない」など、さまざまな声が届いたのです。なるべく全てに耳を傾けていたのですが、情シスだけで対応するのには限界があります。

そこで、全社横断のBox導入チームを作って、部門ごとにチャネルを開設し、細かい課題を吸い上げていきました。同時に、課題管理表を作って、1つひとつできることに対応し、全社説明用の資料やマニュアルもとても丁寧に作りました。他にも、ファイルの外部共有をメールで行う際にミスが起きがちでセキュリティの向上が求められていたので、そういった現状や課題に対して、Boxを使えば安心だということを懇々と説いていったのです。

「現場の困りごと」に真摯に向き合うヘルプデスク

ーー 社内のコミュニケーションで、中島さんが意識していることは何でしょうか?

組織で旗を振って何かを行う際は、信頼が大事です。コミュニケーションをとっても、聞く耳を持ってもらえるような関係構築が日々できていないと前に進みません。

その上で情報システム担当として大事なのがヘルプデスクの経験だと思っています。組織の課題は現場にあるので、「現場の困りごと」に真摯に向き合うことで、組織の改善に活かせる施策を提案できるのです。  

ーー 大きな改革をするにも、日々の小まめな関係構築が大事だと。

まさに、そうです。ヘルプデスクには大きく2つのパターンがあると思っています。1つは、一般的なマニュアルに基づき、問い合わせに回答するオペレーター的な部門。もう1つは、一人ひとりの声をなるべく何でも聞いて、細かいところまで対応するコンシェルジュ的な部門です。

当社の場合、シニアの社員も多いのでパソコンのセットアップやトラブル対応などコンシェルジュ的に手取り足取り対応することが多くあり、そういった対応1つひとつが信頼に繋がります。

ただし、気をつけたいのは特定の人を特別扱いしないこと。その人にしかできないことを行うと、情シスのリソースがパンクしてしまったり、それにより他の社員が困ってしまうケースもあるからです。特別扱いではなく、全員に寄り添ってあげる気持ちを持ってフォローするのがヘルプデスクのあるべき姿だと思います。社員数が増え、組織が拡大していくと、コンシェルジュのようにきめ細かいフォローは難しくなってくるので、このバランスをいかに取れるかがポイントです。このバランスは本当に難しいんですけどね(笑)。年配の社員や経営層には秘書やアシスタント担当がついている場合が多いので、情シスだけで対応せず、その人たちにうまく説明して対応いただくなどもポイントかもしれません。

社員数1000名を超え事業拡大を続ける老舗コンサルティングファームが、いかにDXを実現したのか —— 。中島正太氏に聞く情シスの「あり方」-03

組織の未来に向けたアクションに貢献していく

ーー コンサルティング業界はAIが活用できるか否かが死活問題とも言われています。AIなどの最新ツールの導入についてなどはいかがでしょうか。

世の中の技術トレンドをキャッチアップしていく姿勢は重要です。私自身も、コンサルティング部門から生成AIで何ができるのか質問される前に、下調べをして使えるように準備をしていました。情報システム部門が下地を整えた上で、社員にいかに技術やツールを活用させてあげられるかを考えるのはとても大事なことだからです。

その反面、実際にどう使うかは事業部門に任せた方がいいのかなと思います。現場の業務に適したプロンプトだったり、どのような場面で使うかなどです。DX全般に言えることですが、情報システム部門はインフラの整備やセキュリティへの意識を高く持ちながらも、事業部門のニーズを聞いて、手を組んで一緒に進めていかないとうまくいかないのではと思います。

ーー 新しいツールを社内に導入する際、上司や経営層から「これって高いのでは?」と予算を聞かれる場面も多いと思います。そのケースではどうされていますか。

当然、予算の問題はありますよね。ただ、これって正解がないんですよ。まずは他社の導入事例を検証して、当社ならこのように使って、このような効果が出るのではというイメージを持って、淡々と説明していくことが大事かなと思います。あとは新聞を読んで社会の動向をキャッチアップしておくこと。処世術のレベルかもしれませんが、「以前、日経新聞でこんなことが載っていましたよ」と提案時に一言付け加えるだけでだいぶ違いますね。

ただ、私自身の考えですが、エンタープライズ向けのツールって他社で評判が良かったり、
費用が高いから全ての会社にとって良いものだとは限らないんです。先ほども触れましたが、しっかり現場に入り込んで、自社の課題を認識していないと、最適なツールは選べませんし、世間的に一番良いツールとされているものが最適かどうかはその会社の状況によってさまざまなはずです。

逆に、自社の理解が十分にできている状態で、本当に有用なツールであると判断したのであれば費用が高くても経営層に提案すべきであり、全社を巻き込んでも導入に向けて動く必要があるかなと思います。

ーー そういった姿勢に、情報システム部門としての「あり方」が見えてきそうですね。

情シスで大事なことの1つは、会社のビジョンや理想の組織像を正しく理解することだと思います。私は「今期の当社の売上目標って把握してる?」って、よくメンバーに聞くんです。わからないのって、やはりおかしいんですよね。私たち情シスは組織の間接部門なので、営業のように売上に直接貢献することはないのですが、何のために働いているかっていうと、究極的には売上などの経営目標達成のためです。その目標にタスクを紐付けることが理想なんですよね。経営の3年計画、5年計画など未来に向けたアクションに何か1つでも貢献できるような行動ができる部門でありたいと思っています。

ーー 情報システム部門で働いている方も読んでいるかもしれません。最後に一言お願いします。

私たちも道半ばなので、本来あまり偉そうに言う立場ではありません。ただ、その会社での役割にもよりますが、情シスは会社の情報資産を守るための基盤は最低限構築すべきだと思っています。日本では多くの会社がCIOなどを設置しておらず、経営層がそこまで課題感や危機感を持っていなかったり、持っていたとしてもどのように対策していいかわからなかったりするので、情シスがリードし提言していくことが必要だと思っています。そこでしっかりと信頼を得た上で、生産性の向上だったり、社員の働きやすさに寄与していくだったり、その会社にあった対策を講じたり、ITツールの導入を進めるのが正しい姿なのかなと感じます。そのためにも、日々の現場からの問い合わせに耳を傾けること。そこに、組織改革のヒントがあるはずです。

社員数1000名を超え事業拡大を続ける老舗コンサルティングファームが、いかにDXを実現したのか —— 。中島正太氏に聞く情シスの「あり方」-04
【取材・執筆・撮影:松田 然(スゴモン)】


RELATED POST関連記事


RECENT POST「インタビュー」の最新記事


社員数1000名を超え事業拡大を続ける国産総合コンサルティングファームが、いかにDXを実現したのか

RECENT POST 最新記事

RANKING人気記事ランキング

TOPIC トピック一覧