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コロナ禍は情報システム部門の「大きな転機」に
——フジテックCIOの友岡氏に聞く、チャンスを生かし、
成長するためのマインドセット

 2021.05.14  BJCC

2020年4月7日に、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に発出されたコロナ禍に伴う緊急事態宣言。この日を境に私たちの暮らしや働き方は大きく変わり、それは1年たった今も変わっていません。

この100年に一度と言われるパンデミックは、図らずも企業の情報システム部門にスポットライトを当てることになりました。それは、テレワークへの対応やそれに伴うセキュリティの実装など、情報システム部門なしには対応できないからです。

また、業態によってはビジネスモデルを変えざるを得ない事態に陥った企業も少なくなく、そこでも情報システム部門の力が必要とされました。

このコロナ禍で情報システム部門がクローズアップされている今、このチャンスをどのように生かし、企業と自身の成長につなげていけばいいのでしょうか——。武闘派CIOとして革新的な取り組みをしているフジテック 常務執行役員デジタルイノベーション本部長の友岡賢二氏にお聞きしました。

コロナ禍は情報システム部門の「大きな転機」に——フジテックCIOの友岡氏に聞く、チャンスを生かし、成長するためのマインドセット01
フジテック株式会社 常務執行役員 デジタルイノベーション本部長友岡賢二氏プロフィール:1989 年松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)入社。独英米に計12年間駐在。株式会社ファーストリテイリング 業務情報システム部 部長を経て、2014年フジテック株式会社入社。一貫して日本企業のグローバル化を支える IT 構築に従事。早稲田大学商学部卒業。

コロナ禍は情報システム部門にとって「チャンス」でもあり「ピンチ」でもある

── この1年間、テレワークをはじめとしたコロナ禍に伴うさまざまな環境変化へ対応するために、企業の情報システム部門へ寄せられる期待は急速に高まっています。

友岡賢二: 確かに今回のコロナ禍は、在宅勤務をはじめとする働き方の変革を進める上で、「情報システム部門が会社にとって、重要な役割を担っていること」をあらためて多くの人に知ってもらうきっかけだったと思います。

しかし、その一方で、他社では何の問題もなく在宅勤務を実施できているのに、もし、自社ではなかなか実現できないとなると、一転して「うちの情報システム部門は何をやっているんだ!」と、存在意義を問われる事態になります。そういう意味ではチャンスでもあり、同時にピンチでもあると言えます。

私たちの日常生活は今や、スマートフォンとインターネットサービスを使って多くのことをオンラインで済ませることができます。一方、企業システムに目を向けると、一転していまだに旧態依然としたオンプレミスの仕組みが中心で、コンシューマITとのギャップは広がる一方です。

今回のコロナ禍では、この「両者間のギャップ」があらためて浮き彫りになりましたが、同時に「このギャップを一気に埋められる千載一遇の機会が訪れた」と捉えることもできます。

── これまで多くの企業の情報システム部門は、セキュリティ対策やガバナンスを重視するあまり、どちらかというと新しい仕組みの導入に消極的だったのかもしれません。

友岡賢二: 確かにそうかもしれません。ただし、コンシューマITの世界では既に、インターネット経由でのオンラインバンキングが当たり前になっていますし、写真等のプライバシーに関わるデータをクラウド上に置くことに対しても、もはや多くの人は躊躇しません。そんな中、ただ「危ない、危ない」と言い立てて新しい仕組みの導入を避けているばかりでは、もう一切のデジタル化を諦めることになってしまいます。

そうではなく、リスクはリスクとしてきちんと押さえつつも、同時にインターネットサービスやクラウドサービスを積極的に活用することで得られるメリットも冷静に評価する必要があります。

加えて、デジタル化を進めないことで生じるビジネスリスクもきちんと評価しておかなければいけません。これからの時代、デジタル化を進めなければ他社と比べた場合の相対的なサービス品質は低下していく一方ですから、当然、お客さまも離れていってしまいます。「実行するリスク」だけでなく、こうした「実行しないリスク」も加味した上で、全体のビジネスリスクを評価しなくてはなりません。

── 一方、コロナ禍以降は、テレワーク環境の整備や業務のペーパーレス化など、情報システム部門に求められる仕事の量も一気に増えました。ユーザー部門に頼まれたことをこなすのに精一杯で、自ら新しいことを考える余裕がなくなってしまっている面もあるかと思います。

友岡賢二: ユーザー部門の方々が持つITの知識は、どんなにITリテラシーの高い人がいたとしても限界がありますから、ITを用いたソリューションのアイデアも自ずと限られてきます。しかし情報システム部門なら、最新技術に関する知識とアイデアを駆使することで、ユーザー自身も気付いていなかったような潜在的な課題を掘り起こして解決できるはずです。

そうやって「言われたこと」だけではなく「言われてもいないこと」を即座にやってみせると、その取り組みはユーザーの目には、まるで魔法のように映って「すごい!」と感謝してもらえます。こういう価値を提供できた瞬間こそ、ITに携わる者にとっての最大の喜びなのではないでしょうか。

── そうすることによって、組織の中における情報システム部門の存在感も高められますね。

友岡賢二: あくまでも情報システム部門の役目は「ビジネスのための道具としてのIT」を提供することで、本当に大事なのは「その道具を使って、いかにお客さまに高い価値を提供できるか」にあります。従って情報システム部門の評価や評判ということについて、実は個人的にはあまり興味がないんです。「情報システム部門が主語の話」に、あまり意味はなく、真に語るべきは「お客さまを主語にした話」であるはずです。

経営層やユーザー部門にテクノロジーが通じないのは当たり前

── 「お客さま」を主語にして語るためには、情報システム部門といえどもビジネスについて深く知る必要がありますね。しかし情報システム部門の人たちはどうしても、テクノロジーを主語に語りがちな傾向があります。

コロナ禍は情報システム部門の「大きな転機」に——フジテックCIOの友岡氏に聞く、チャンスを生かし、成長するためのマインドセット02

友岡賢二: そうですね。実は僕は「在宅勤務」という言葉の響きがとても好きなんです。なぜかというと、この言葉の中にはテクノロジーの要素が一切入っていないからなんです。これが「テレワーク」となると、一気に「テクノロジー寄りの響き」になってしまいます。ですから、在宅勤務の話をユーザー部門や経営陣と話すときも、いきなりVPNやクラウドやSaaSの話をしても話が通じないのは当たり前で、あくまでも「生産性が高く、“安全・安心”な在宅勤務をいかに実現するか」を説明すればいいんです。

── ユーザー部門や経営陣の目的は、ITツールを使うことではなくて、あくまでもビジネスを伸ばすことにあるわけですからね。

友岡賢二: 他社の情報システム部門の方からのお悩み相談として、「うちの経営層はクラウドを理解してくれなくて困る」といったような話をよく聞くのですが、経営層がクラウドを理解する必要はありませんし、ましてや経営層にクラウドの話をすることにも何の意味もありません。そうではなく、ビジネスの話をすればいいのです。

さらに言えば、テクノロジーの導入が逆効果になることだって十分あり得ます。物事を考える順番としては、まず「Who」があり、次に「What」が来て、最後に「How」が来るべきです。まず「誰に何を実現しようとしているのか」を考え、そこが明確になった上で「How」、つまりどんな道具や手段を使って実現するかを考えればいいわけです。この順番が逆になってしまうと、まずテクノロジーありき、ツールありきの議論になってしまいます。これではなかなか経営層には理解されません。

── ユーザーやお客さまの立場に寄り添うことで、本当に必要なものが見えてくるということですね。

友岡賢二: そのためには、現場を直接見ることがとても大事だと思います。実際に仕事の現場を観察してみると、一見すると無駄に見えるようなことで時間や労力を割かれていることに気付くことが多々あります。しかし、外から見ると無駄に見えるようなことも、やっている本人は必要不可欠な仕事だと思って一生懸命やっていますし、この苦労を解消できる方法が世の中にあることを知らない場合が多いんです。

そのような現場の「痛み」に寄り添って、お医者さんのように「これって痛いですよね」と寄り添うと、「いや、実はそうなんですよ!」と、一気に心を開いてくれる瞬間があります。そこでテクノロジーを使って痛みを取り除いてあげれば、「ありがとう!」と感謝してもらえますし、実践した側にとっても自分が提案したことで「確かに未来を自分たちが変えられた!」という実感を掴めます。そういう感覚を持てることこそ、情報システム部門の仕事の醍醐味なのではないかと思います。

── ただ、そうやって自ら動いて現場の痛みを取り除こうと思っても、上司に「勝手なことをするな!」と潰されてしまうこともありそうですね。

友岡賢二: 実際、そういうことは往々にしてありますよね。ただ、せっかく志を高く持てたのに、上長に反対されたばかりに諦めてしまうのは実にもったいない話です。

そんなときは、「ユーザー部門の力のある人と直接、話を付けてみること」をお勧めします。現場で実際にビジネスを支えている部門は発言力も強いですから、そういう部門のキーパーソンと手を組んで守ってもらう形でプロジェクト化してしまえば、情報システム部門の上長の反対もうまく突破できるかもしれません。

好き嫌いにとらわれず、目の前の仕事と真摯に向き合ってみる

── 日々の忙しさにただ追われるだけでは、情報システム部門で働くエンジニア個人にとっても、自分が本当にやりたいことについて考える余裕がなくなり、結果的に自身の成長が阻害されてしまうことにもなりかねません。

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友岡賢二: 自分の特性は、自分自身で理解する必要があります。結局、自分がやりたいことや好きなことというのは、言い換えれば「自分の脳が喜ぶこと」です。つまり、それをやり続けることがとても楽しかったり、いつまででも続けていられたり、少なくともやっていて辛くはないということです。

ただし、自分が進むべき道を真剣に考えるのであれば、単に好きなことややりたいことだけを追い求めるのではなく、同時に「自分ができること」「自分がやらなければならないこと」についても意識しなくてはなりません。「好きなこと」「できること」「やらなければならないこと」。この3つが一致することがまさに理想的で、その人にとっての天職が見つかったと言えるでしょう。

── 中にはそもそも「何をやりたいのか分からない」「好きなことが見つからない」という人もいるかと思います。

友岡賢二: 「好きなこと」というのは、実はかなり曖昧なところがあると思います。僕自身も、実はもともとITは決して好きではなかったんです。商学部を出たこともあって、マーケティングをやりたかった。でも、ITの仕事をやっていて少なくとも苦痛ではなかったし、そこそこ成果も上げられたので、続けているうちにだんだんできることが増えていって今に至る、というのが正直なところです。

ですから、若いうちは自分が好きかどうかにはあまりこだわり過ぎずに、とりあえず「皿に盛られた飯」(アサインされた仕事)を食ってみることをお勧めします。好きではないものの中にも自身の成長の糧になるものは必ず含まれているものですし、辛抱して食べているうちに、いつの間にか食べられるようになることも多々あります。何事にも前向きに取り組むことが大切です。

もちろん、いつまで経ってもどうしても好きになれないものはありますから、そういうものは「やはり自分には向いていなかった」と判断していいと思います。ただし、自分自身の経験にプラスになっていることが多々あります。いつの間にか食べられるようになっていて、しかもそれによって自身が成長していることに気付いたら、その時点で「自分は実はこれが好きだったんだ!」とあらためて自分に思い込ませてしまえばいいわけです。

── 当初は自分には向いていないと思っていた仕事でも、目の前のタスクに打ち込んでいるうちに、いつの間にか成果が出せるようになったり、その過程で自身がその仕事に案外、向いていることを発見したりすることで、いつの間にか好きになっていることはありますよね。

友岡賢二: 加えて言えば、「自分がやらなければならないこと」に関しても、経験を積んでいくうちにその内容は徐々に変わっていきます。初めのうちは「外から与えられた仕事」や「やらなければならないこと」だったのが、経験を積んでいくうちに徐々に「自分にしかできないこと」に取って代わるようになります。

僕自身に関して言えば、最初は「周囲から求められるままにやっていたITの仕事」だったのですが、今では「日本でCIOという職業を確立する」という、「自分にしかできないこと」に生きがいを感じるようになっています。

そうやって、当初は与えられた仕事をこなすという地点からスタートしつつも、最終的に自分にしかできないことを見つけることができれば、自分の人生を豊かなものとして感じられるようになると思います。

信頼される情報システム部門になるために、今すぐ実践できること

── そうしたキャリアを目指すために、今すぐ実践できるようなことには何がありますか?

コロナ禍は情報システム部門の「大きな転機」に——フジテックCIOの友岡氏に聞く、チャンスを生かし、成長するためのマインドセット04

友岡賢二: 例えば、会社の中のいろいろな職場をぶらぶら歩いて見て回るのはお勧めです。私自身もよくやるのですが、いろんな部署の現場を見て回ると、「なぜ、営業部門のこの人の机の上にはこんなに紙の資料が積みあがっているんだろう?」「なぜ、資材管理のあの人は伝票を手にして倉庫を走っているんだろう?」という素朴な疑問や違和感が湧いてきます。そうしたちょっとした違和感が、将来のソリューションの種になることが多々あります。

そういう「目の前の課題」を今すぐ解決するのは難しかったとしても、そうした違和感を頭の片隅に置いておけば、将来、何らかの新たなテクノロジーやツールに触れたときに「あ、これは、あのとき感じた違和感を解消するために役立ちそうだ!」と、とっさにひらめきます。

そういう「業務の前提知識がゼロだからこそ覚える違和感」のようなものは、ぜひ大切にしてほしいですし、そのためにもいろいろな業務の現場を直接自分の目で見て回ることが大切だと思います。

コロナ禍の今は、現場を見て回るのは難しいかもしれませんが、落ち着いたらぜひ実践してほしいですね。

【取材:三原茂・辻村孝嗣・後藤祥子(AnityA)執筆:吉村哲樹 企画・構成:後藤祥子(AnityA)】


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