12月13日にBox Japan Cloud Connections(BJCC)の第5回ミートアップが開催されました。そのレポートをお伝えします。
第5回のテーマは『〜リモートワークの悩み〜』。
BJCCでは、企業にとっては生産性を上げ、そこで働く人にはより効率的、かつ充実した働き方ができるデジタルワークプレイスの実現を主なテーマとしています。そのデジタルワークプレイスは物理的な場所に縛られないこと、つまり「物理的なオフィス」が「職場」ではなく、「その人が働く場所」が「職場」になることが必要だと考えており、リモートワークはそうしたデジタルワークプレイスを実現する上での重要な構成要素となります。
その一方で、「リモートワークのためにITツールを導入する」だけでリモートワークが実現できるわけではありません!BJCCでは適したITツールはもちろん、法律や社則といった「制度」、そして実際に従業員がリモートワークを実践できる「カルチャー」が必要だと考え、今回のミートアップのテーマとなりました。
今回の勉強会のアジェンダ:
テーマ:『〜リモートワークの悩み〜』
- リモートワークのなやみ。アウトプットコーナー!
BJCCコミュニティリーダー原田さん - あなたのいる場所が職場になる。Zoomのご紹介
Zoom Japan 加賀 様 - リモートワークを身近に〜Zoom活用〜
株式会社IDCフロンティア ネットワーク本部 IT・セキュリティ部 業務環境グループ
前川 様 - 新しい働き方の実現に向けたチャレンジ
株式会社Box Japan 執行役員 ジャパンピープルパートナー& ピープルオペレーションズ 風間 様 - ディスカッションタイム
『リモートワークに大事なものはIT(ツール)だけじゃない』
オープニングとして、最初にコミュニティリーダーの原田さんが『リモートワークに大事なものはIT(ツール)だけじゃない』と題して、今回のミートアップ全体の意図や背景、課題といったことについて触れました。
原田さん自身、自分の勤める企業では、社内の働き方改革推進をするIT担当メンバーのひとり。SaaSを積極的に活用して生産性を上げよう!と社内に提案していく中で、クラウドやSaaSに対する誤った理解や、古いシステムの考え方による壁にぶつかったそうです。そうした悩みを共有して、みんなでその壁を乗り越え、もっと働きやすい日本にしていきたい!といったから想いからコミュニティに参画した経緯があります。その原田さんによるリモートワークに対する問題提起です。
リモートワークに必要なものはIT(ツール)だけでしょうか?ITツールも重要ですが、経験的にもそのITを活かす考え方や制度、カルチャーが伴わなければ、リモートワークの効果は出ないと考えています。リモートワークをやりたい、でも実現できてない。リモートワークできる環境はあるけど、うまく活用できていない。それはなぜだろう?みなさんはどのように考えていますか?こうした問題提起と共に、まずは参加者みんなでネットワークキングタイムを兼ねて、お互いの「リモートワークに対する考えと課題」を話し合ってもらいました。
ここで上がった代表的な意見をご紹介します:
- 来年のオリンピックに備えて、リモートワークを検討しなければいけないが、リモートワークをするシーンがイメージできていない。
- 育児休暇、時短勤務、在宅勤務など、限定的な業務の際に利用するだけ、もっと有効な活用方法があるのでは?と思って参加しました。
- リモートワークと生産性、本当に効果があるのか実感できていない、といったリモートワークのあり方そのものを模索する意見やリモートワークできる環境は揃っているが、社内で積極的に活用する雰囲気になっていない。
- 取り組んではいるが、BCP対策など部分導入にとどまっていて、日常的に使えるように整備されていない。
など、リモートワークをより活用するため方法やそもそもの目的を模索するような意見もありました。
『あなたのいる場所が職場になる』
リモートワークに対して意見や課題が共有できたところで、Zoomの加賀さんのセッション。タイトルは『あなたがいる場所が職場になる』です。
ZoomはWeb会議の先駆者、CiscoのWebEXのエンジニアがスピンアウトして創業した会社です。PC、モバイル、会議室どこからでもシームレスに会議に参加できるようにするのがZoomのミッション。サイボウズ社での利用例では、既存の「Garoon」とシームレスに連携され、ユーザーはワンクリックで簡単かつシンプルにリモートワークが始められるようになったといったユーザーの声が紹介されました。講演の中で、特に参加者の興味を引いたのは「Zoom Rooms」。
「Zoom Rooms」は仮想的な会議室でZoom上に様々な「Rooms」が用意されています。参加者は自分の参加したい「Rooms」をクリックするとWeb会議がスタートします。登録されているメンバーだけでなく、プレゼンテーションの中で紹介されたQRコードをスキャンすると、自動的にZoom Appが立ち上がり、一斉にそのZoom会議に参加できます。会場でスキャンした人たち30人以上が一斉に目の前に映し出されたZoom会議の画面に参加するデモは圧巻で、「あなたのいる場所が職場になる。」体験でした。すべての参加者の映像は、とてもクリアかつスムーズで動きを実体験できたと思います。
今後は、より利用社の生産性を上げるアップデートとして、クロマキーを使ったバーチャル背景でプレゼンテーションの資料を表示したり、会議の音声を自動で拾って、字幕を表示したり、二ヶ国語を話せる通訳者を自動でつないで同時通訳サービスを提供したりと、ビデオミーティングならではのサービスの拡充を予定しているそうです。デジタルワークプレイスを構成する重要なコンポーネントのひとつ、『Web会議』の新しいあり方を感じられるセッションでした。ちなみに、今回のミートアップはZoomを利用して東京と大阪を結び、大阪からも多数参加してもらっています。
『セルフマネージメントを前提としたリモートワーク環境つくり』
Zoomについて理解をした上で、続いてZoomの実ユーザーとして、『リモートワークを身近に〜Zoom活用〜』というタイトルでIDCフロンティアの前川さんが登壇しました。
最初に同社のリモートワークへの取り組みについての紹介がありました。その中で興味深かったのは、制度としてリモートワークがきちんと定義されているところでした。2016年にリモートワークのトライアルがスタート。業務の性質、役割に応じて、段階的に実施し、現在は制度として月5回までリモートワークが認められているそうです。定めているのは以下のポイントです。
- 個人のパフォーマンスを最大限にするのが目的であること。
- セルフマネージメントできることが大前提であること。
シンプルなルールを設定し、個人の裁量に委ねているのが印象的でした。同社では、このリモートワークを実現するために、既存のWeb会議システムのリプレイスが検討されました。必須条件として、貸与PC、貸与スマートフォンどちらからもアクセスできること。自宅のインターネットからもアクセスできること。画面共有が遅延なくできること、東西の拠点間を常時接続し、タイムリーにお互いの状況が感じられるようにすること。こうした条件からソリューションを選定し、Zoomを選んだそうです。セッションの中で印象的だったことは、「ツールで選ぶのではなく課題解決から選ぶべきだ」と言われていたことです。
実際に同社では導入するだけなく、ユーザーの不満点をきちんとヒアリングし、課題を確認し、その課題に対して改善策を提示した結果、大きな混乱なく導入できたそうです。リモートワークを導入するにあたり大切なこととして、物理的な距離はあっても、コミュニケーションの距離を感じさせてはいけないと考えているそうです。例えば、リモートから参加の人に「ちゃんと聞こえていますか?」「何か言いたいことはありますか?」と積極的に声をかけている。ちょっとした心遣いですが、こうすることでリモートから会議に参加する人の疎外感を取り除いてあげることができるそうです。カルチャー形成の一端にもなりますが、リモートワーク活用の不安を取り払い、定着させる重要な取り組みだと感じました。
『Box社員にとっての働き方改革の目的は生産性の向上、以上!』
最後のプレゼンは、Boxの経営管理部門より、風間さんから新しい働き方として、リモートワークもできるようになっているBoxの制度やカルチャーについてのご紹介です。
まずはBoxの働き方改革の取り組みの目的は、「事業運営のコスト削減などではなく、生産性の向上以外の何者でもない!」と言い切ることから始まりました。働き方改革の取り組みの重要な要素として①IT・システム、②制度・ルール、③文化・カルチャーの3つの課題を提示。①IT・システムに関しては、Boxは様々なSaaSを組み合わせたBest of Breedな環境でいつでもリモートワークに対応できるように準備ができていると公言。
今回は特に、②制度・ルール、③文化・カルチャーに踏み込んでお話し頂きました。企業によっては、「制度が遅れている」という話を聞くが、実際は法令遵守の要素が大きいため、「制度がおいついていない」と言うのは不自然であって、法律は守るしかない。それはどの企業も変わらないはずです。よって、当社においても法令遵守を尊重することは社会に対して説明責任は果たす上で重要と考えている、と説明されました。
Boxではその法令遵守は社員を性善説でとらえ、細かな就業規則などは可能な限り排除し、上長と部下の信頼関係に基づいた判断ができる『最低限のルール』で運用している。IDCフロンティアのリモートワークも同様でしたが、あえて細かいルールを設けないことで、従業員はリモートワークに対する柔軟性が与えられ、社員は自分が最も生産性が上がると考える働き方や場所の選択が可能になります。ただ、その一方で法令遵守だけでは解決できない問題、例えば社員の健康管理などの問題は手厚い保険(GLI、GPAI、GLTD)に加入するなどし、従業員に対して不利益が被らない仕組みを提供しているとのことでした。
また、このような性善説に基づいたルールを運用していくには、全社員と性善説に基づいているという共通認識を持つことが重要で、その実現には自社のカルチャーが重要だと考えているそうです。いわゆる社訓であるBoxの『7 Values』(7つの価値基準)にフィットするかどうかは、採用時から重要視しているそうです。リモートワークの実現にはIT・システムはもちろん、制度の理解とそれを実現するためのカルチャー、この3つが必要だと結論付けていました。
今回の最後のアジェンダは、登壇者を交えてのディスカッションタイムです。ディスカッションされた中で特徴的なトピックをご紹介します。
リモートワークを検討したきっかけは?
- 多様な職種らのリクエストがあって、多様なリクエストに答えるために導入をすることにした。
実際に生産性があがりましたか?
- すべての業務がリモートワークに適しているわけではないと思う。集中してやるような仕事はリモートワークに向いている。その他、移動時間を節約できた、効率的に活用できた、という声は多かった。
- 入社したときからリモートワークはできて当たり前になっている。ただし、リモートワークできる、ということがメリットではなくて、自分の業務や仕事の内容に応じて、一番働きやすい場所で働く環境を提供していることが従業員にとってのメリットだと考えている。
リモートワークにおいて、セキュリティ面での心配はないか?
- ITで守れる部分にも限界はある。例えばカフェで仕事をしていて横から覗き見られてしまうことなど。公の場では周りを画面もだが、会話にも気を遣うといった本人が自主的に守らなければいけない部分もあると思う。
- 実際にリモートワークするといろいろ課題は出てくる。プライバシーフィルターの提供など、最低限のセキュリティ確保の道具は提供している。また、社員同士も電話会議しやすい場所の共有や、自己防衛方法などのノウハウを共有し、他のアイデアも出し合って創意工夫している。会社としても、スポットで利用できるリモートオフィスなどの契約は検討している。
リモートワークを実践して気付いたことはありますか?
- 実はオフィスの環境はとても優れていることに気づく。椅子1つをとってもオフィスの椅子は疲れにくい。オフィスは働く環境としては充実したものだと再認識した。
- リモートで仕事ができるとしても、対面でのコミュニケーションは重要だと考えている。リモートワークできる環境も重要だが、平行して働きやすいオフィスを整備して、対面でないとできないコミュニケーションも大事にしないといけない。
- リモートワークを推奨しているが、実際にはオフィスに来る人も多い。一緒にいるからこそやりやすい仕事もある。
総括
Box Japan Cloud Connections(BJCC)は、企業にとっては生産性を上げ、そこで働く人にはより効率的、かつ充実した働き方ができるデジタルワークプレイスの実現を目指しています。そして、そのデジタルワークプレイスは「“物理的”な場所」に縛られるものではないと考えています。物理的な場所に縛られないこと、それはつまり「物理的なオフィス」が職場ではなく、「その人が働く場所」が職場であると考えており、リモートワークはそうしたデジタルワークプレイスを実現する重要な要素です。
昨今増加している自然災害や、来年開催を控えている東京オリンピック、多様な働き方を認める働き方改革の推進などにより、リモートワークのニーズは年々高まっており、様々なリモートワークを実現するITツールも世の中に登場しています。
しかし、ITは重要だが「リモートワークを実現するITツールを導入した」だけではリモートワークが実践され、効果を発揮するわけではないようです。今回のミートアップでは、リモートワークを企業の力とするためには、すぐれたITツールの活用はもちろん、あらためて制度および、ツールを上手に利用するためのカルチャーが必要だと認識できたと思います。
さらに、IDCフロンティアのセッションでもありましたが、導入で終わりではなく、利用するユーザーの声を聞いて、改善ポイントを把握、Web会議特有のコミュニケーションのとり方を工夫という、導入したツールがきちんと「使われる」ブラッシュアップも重要だと認識させられました。また、Boxの話しにあったリモートワークに対する心理的な壁を取り除くために自社の文化形成も重要だと捉え、サポートしていく。そんな試みも参加者には参考になったと感じました。物理的な場所に縛られず、従業員が一番働きやすい場所、時間等さまざまなニーズを満たす「職場」を提供できるZoomをはじめとしたビデオ会議はまさに旬なソリューションだと感じました。
このような現在の取り組みは、生産性の向上とITのあり方に関して、時代の変化があるのではないでしょうか。かつて、生産性の向上のためには企業が企業自身の生産性を上げる仕組みを提供すれば、従業員はそれを黙って使うという形でした。しかし、時代は変化し、そういった企業側中心の仕組みから、従業員側が中心の仕組みへとシフトし始めています。IT、文化、制度といった面から各従業員が満足して、効率的に働けるような環境を整備することで、結果として企業の生産性を上げることに繋がるという考え方に変化してきたと感じています。
さて、次回の勉強会のテーマは「ペーパーレス」を取り上げたいと思います。リモートワークが生産性向上につながるように、ペーパーレス化も紙の削減によるコスト削減だけではなく、それ以上に生産性向上に大きく寄与するものだと考えています。ペーパーレス化に対して、どのように向き合えば生産性向上につながるのか?その観点からペーパーレス化の課題とその取り組み方を主な議題とする予定です。2月上旬に開催予定です!詳細はこちらのHPで告知させて頂きます。
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