離れた場所でも「お互いの顔を見るコミュニケーション」、あたりまえの世界に——Zoom Video Communications 日本法人のカントリーゼネラルマネージャー・佐賀文宣氏に聞く「DX時代の働き方とZoomの世界観」

 2020.05.27  BJCC

いつでも、どこでも、どんな環境でも、「会社にいるのと同じように」話したい人とコミュニケーションできる——。新型コロナウイルスの影響により、「出社して働くこと」が難しくなる中で、読者の皆さんも、今ほどリモートによるコミュニケーションの重要性を実感させられたことはなかったのではないでしょうか。

しかし、コロナ禍の影響以前から、企業におけるコミュニケーションの形が変わり始めていたのも事実です。ITの進展やビジネスモデルの変化に伴って働き方が変わり、業種の垣根や組織の枠を超えてコラボレーションしながら、1つのプロジェクトを遂行することが当たり前になりつつある中で、物理的なオフィスに依存することなく働ける「デジタルワークスペース」の活用と、どのような環境でも働ける組織体制の構築、そして「離れた場所でも互いの顔を見ながら話せるコミュニケーショ」ンをできるツールの導入は不可欠なものになろうとしています。

働く環境が変わっていく中で注目されているサービスの1つが、Web会議システムを提供する「Zoom」です。あたかも会社にいるかのような顔を見ながらのコミュニケーションが簡単に始められるクラウド型サービスとして誕生したZoomは、導入のしやすさや使いやすさ、柔軟なモバイル機能で人気を博し、米国を中心に急成長を遂げています。日本でもサービスがスタートした2019年7月には約2500社*だった顧客数が、約半年後の2020年1月末には3500社*超に達し、さらに、5月現在では1万社*に達しました。また、全世界での1日の会議参加者数も昨年末は1千万人でしたが、4月には3億人と30倍に跳ね上がっています。
*10ライセンス以上の企業ライセンスをご契約いただいた企業の数

Zoomはなぜ、多くの企業に導入されているのか、導入企業の働き方をどう変えているのか、それによって企業のビジネス課題はどのように解決されているのか——。ZVC Japanでカントリーゼネラルマネージャーを務める佐賀文宣氏にお話を伺いました。

離れた場所でも「お互いの顔を見るコミュニケーション」、あたりまえの世界に——Zoom Video Communications 日本法人のカントリーゼネラルマネージャー・佐賀文宣氏に聞く「DX時代の働き方とZoomの世界観」

【プロフィール】ZVC Japan(Zoom )
でカントリーゼネラルマネージャーを務める佐賀 文宣氏。2019年7月よりZVC JAPAN株式会社(Zoom )カントリーゼネラルマネージャーに就任。Zoom入社以前は、VMware日本法人でパートナービジネスを統括。VMware以前はWebexでパートナー開拓を、また日本IBMではエンジニアリングに従事していた

“顔見せコミュニケーション”にこだわって急成長

——:Zoomが米国で設立されたのは2011年ですが、すでに複数のビデオ会議システムが存在していました。そんな中、なぜZoomは急成長したのでしょうか。

離れた場所でも「お互いの顔を見るコミュニケーション」、あたりまえの世界に——Zoom Video Communications 日本法人のカントリーゼネラルマネージャー・佐賀文宣氏に聞く「DX時代の働き方とZoomの世界観」01

佐賀文宣:「設計思想」がまったく異なることが、その理由かもしれません。

これまでのビデオ会議システムは、レガシーなアーキテクチャを採用していました。ネットワークやデバイス側に負荷をかけないよう、「サーバ側で高負荷な処理をする」アーキテクチャです。ですから、サーバやネットワークの負荷状況によっては、映像と音声がずれるなどの課題があったのです。

一方、Zoomは独自のコーデック技術を採用しています。端末まで適切なデータを送り、端末側で処理をするという、分散処理型のアーキテクチャです。また、複数拠点のデータセンターが同期しているので、利用者にいちばん近いデータセンター(サーバ)で処理をします。つまり、遅延が発生しにくいのです。

CEOのエリック・ユアン(Eric S. Yuan)がZoomを設立した2011年は、モバイルデバイスが普及し、無線通信システムが第4世代(4G)になり、クラウド利用が当たり前になってきた時代です。エンドポイントとなるモバイルデバイスの処理能力も劇的に向上しました。そうした「モバイルクラウド時代」に最適なアーキテクチャとして開発されたのがZoomです。

Web会議システムの根幹である「つながりやすく、途切れにくい」という価値を提供できるのは、そうした設計思想があるからです。

——:Zoomのミッションについて教えてください。Zoomにはビデオミーティング中に自分の背景を好きな画像や動画に差し替えられる「バーチャル背景」や、肌を美しく見せる「美肌加工」など、人がWeb会議をすることをためらってしまいがちな点を解消するさまざまな機能が備わっています。こうした機能は、どのような発想から生まれたのでしょうか。

佐賀文宣:実はZoomにとって「遠隔拠点をつないでリモート会議をする」ということは、実はコミュニケーション手段の1つに過ぎません。私たちのサービスは「どうやったらコミュニケーションがより豊かなものになり、もっと活発な関係が築けるか」という、コミュニケーションの本質が原点になって生まれたサービスなのです。

私たちの日常には、大小さまざまな規模のコミュニケーションがあります。たとえば、オフィスでは2〜3人が集まって行う「ちょっとお知恵拝借」というレベルの雑談から、ある案件について部門横断で具体的なことを話し合うような10人単位の会議まで、多種多様なコミュニケーションがありますよね。Zoomは「ビデオ」という手段を利用し、どこにいても、そうしたコミュニケーションを可能にするためのツールなのです。

この「コミュニケーション」について、Zoomには大切にしている信念があります。それは「お互いの顔を見る」ことなんです。

離れた場所でも「お互いの顔を見るコミュニケーション」、あたりまえの世界に——Zoom Video Communications 日本法人のカントリーゼネラルマネージャー・佐賀文宣氏に聞く「DX時代の働き方とZoomの世界観」02

これまでビデオ会議ツールを使う際には、ネットワークやサーバに負荷をかけないようにするため、ビデオの利用を控える傾向にありました。最初だけ顔を写して挨拶し、会議が始まるとビデオをオフにして音声だけで会議することも少なくありません。

しかし、これでは「一言も喋らないで会議を聞いているだけ」の参加者ばかりになります。つまり、「会議の当事者」ではなくなってしまう。それではコミュニケーションとは言えません。今は昔に比べればネットワーク回線もリッチになりましたし、サーバの負荷を軽減するための技術も発達していますから、こうした“ネットワークが厳しかった時代の習慣”を変えていけたらと思っています。

コミュニケーションをより良いものにするためには、「相手の反応を確認すること」が大切です。そのためには“参加するためのハードルを下げる”ことが大事なので、散らかった部屋を見せずにすむ「バーチャル背景」や、顔の写りをよくする「美肌加工」といった、「ビデオを常にオンにしてもらう」ための工夫を盛り込んでいるのです。

(CEOの)エリックは、「より良いコミュニケーションをするためには顔を見せることが大切。だからそのために必要な機能はすぐに取り入れる」という姿勢でZoomを開発しています。もちろん、Zoomにはチャット機能や録画機能など、さまざまな機能がありますが、それらは「コミュニケーションを補完する一機能」でしかありません。

私もZoomを使ってコミュニケーションをしていますが、1日に何度も“呼ばれ”ます。あらかじめ設定されたミーティングはもちろん、「ちょっと相談したい」というコミュニケーションや、「お客様にデモをお見せするから顔出しに協力してください」というリクエストまでさまざまです。われわれには「コミュニケーションするには、まずZoomでコンタクトする」というカルチャーが定着しています。

2035年にはコーヒーの香りが伝わるコミュニケーションを・・・

——:現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、リモートワークや在宅勤務を始める企業が急増し、デジタルワークスペースへの注目が高まっています。そうした期待にZoomはどのように応えていくのでしょうか。

佐賀文宣:現在、お問い合わせをいただいている大半は、これまでリモートワークや在宅勤務をした経験のないお客さまからのものです。そうしたお客さまには「遠隔地をつなぐだけの会議システムではなく、これまで物理的なオフィスで行っていたコミュニケーションをオンラインでもできる環境を作りましょう」と提案しています。

われわれが、リモートワークや在宅勤務に取り組んだ経験からアドバイスできることは、「在宅勤務でも孤独感を感じず、常に仲間とつながっていると実感できる環境が大切」ということです。

在宅勤務は孤独です。集中しすぎてオンとオフの境目がなくなり、オフィスで働くよりも長く働いてしまう傾向があります。ですから、「会議の時だけつながればいい。その方が作業効率が向上する」と考えるのは間違いなのです。在宅勤務の時こそ、「つながっている」ことを実感できるツールが必要なのです。

——:コロナ禍を受け、Zoomを活用してイベントやセミナーを実施する企業も急増しています。こうした企業を支援する取り組みを教えてください。

佐賀文宣:以前から「Zoomを利用して、セミナーやトレーニングを実施したい」というご要望はありました。しかし、「卒業式をZoomでできないか」という相談をいただくようになるとは想像していませんでした。

現在は、さまざまな物理イベントを中止せざるを得ない状態が続いています。実際、いくつかの卒業式(の配信)を支援させていただきました。これは私たちも初めての経験でしたので、お客様とアイデアを出し合い、工夫しながら乗り切ったというのが正直なところです。

しかし、こうした経験を蓄積していけば、将来的には、「新しい形のコミュニケーション(コミュニケーションの未来)」を提供できるようになるでしょう。たとえば、物理的な制約で卒業式に参加できなかった人も(Zoomを介して)参加できるようになります。Zoomには録画機能が備わっていますから、アーカイブとして保存し、後で振り返ることもできる。こうしたノウハウは今後の糧になるはずです。

Zoomが考える「コミュニケーションの未来」

——:Zoomが考える「コミュニケーションの未来」とは、どのような姿でしょう。

佐賀文宣:われわれは、「オフィスのコミュニケーション(ソリューション)を1つにする」という未来像を考えています。

オフィスで利用している同期コミュニケーション(話しかけたらすぐ返事ができる環境でのコミュニケーション)ツールは、社内電話、テレビ会議、Web会議があります。多くの場合、これらのシステムはすべて別々の製品です。当然、提供するベンダーも違いますから、調達も導入も管理もバラバラです。でも、よくよく考えてみるとおかしな話ですよね。

音声だろうが、ビデオだろうが、同じ信号処理をすれば、リモートコミュニケーションは1つのサーバで事足ります。ですから、Zoomではこれらを「1つの同期コミュニケーション」として提供したいと考えています。

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——:それはZoomがSaaS(Software as a Service)であることと関係していますか。

佐賀文宣:そうですね。オンプレミス型の製品は、システムを導入させることが目的でした。しかしZoomはサブスクリプションモデルですから、利用者が使い続けたくなるサービスを継続的に提供していく必要があります。つまり、Zoomの場合、「導入」はスタート地点であり、開発会社としては利用率を高めるための工夫をし続ける必要があるのです。

常にユーザーの声に耳を傾け、そのフィードバックを製品改善につなげていく——。こうした「利便性と体験を価値として提供する」という発想は、SaaSベンダーならではでしょう。

——:Zoomは他のSaaSベンダーやハードウエアベンダーとも積極的にパートナーシップを構築しています。

佐賀文宣:われわれはZoomがコミュニケーションのポータルになるとは考えていません。Zoomができるのは、同期コミュニケーションだけです。デジタルワークスペースには、同期型/非同期型のコミュニケーションやコラボレーションが必要であり、Zoomが強みとしてるのは同期型です。非同期コミュニケーション(双方の都合に合わせて返事ができるコミュニケーション)には、Slackやコラボレーションの情報共有基盤/コンテンツ管理の Box など、さまざまなサービスがあります。

デジタルワークプレイスを活用するための入り口は、お客様の働き方によって異なるでしょう。たとえば、(容量の大きい)CAD(Computer-Aided Design)データなどを扱う企業で、すでにBoxのストレージサービスでファイルを共有しているなら、その作業の過程でリアルタイムのコミュニケーションが必要になったときに、Zoomの導入を検討すればよいのです。

Zoomでは、仕事はもとより生きる上で必須のコミュニケーションをより良いものとすべく投資をしていきます。CEOのエリックは、Zoomの未来像について「2035年にはコーヒーの香りが伝わり、握手ができるコミュニケーションツールにしたい」と話しました。Zoomの根底にはそういった世界観があるのです。

Zoomについて

2011年、Cisco Systemsでビデオ会議の「WebeX」を開発をしていたEric Yuan氏が設立。本社はシリコンバレー。著名ベンチャーキャピタルのSequoia Capitalから資金調達し、2019年4月に米ナスダック市場に上場した。2020年4月の従業員数は約2800 人。

【執筆:鈴木恭子 構成・編集:後藤祥子(AnityA) 撮影:小川よしのぶ】


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